教員紹介

もりやま しんや

護山 真也

哲学・芸術論 教授

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第21回拡大プラジュニャーカラグプタ研究会

プラジュニャーカラグプタ研究

 3月28日・29日の両日、東京学芸大学にて拡大プラジュニャーカラグプタ研究会に参加してきました(研究会そのものは27日より開催)。  プラジュニャーカラグプタは8世紀に活躍した仏教哲学者であり、インド仏教認識論・論理学の大成者ダルマキールティの『プラマーナ・ヴァールッティカ』(量評釈)に浩瀚な注釈書『プラマーナ・ヴァールッティカ・アランカーラ』(量評釈荘厳)を著したことで知られています。  本邦におけるプラジュニャーカラグプタ研究は、神子上恵生、渡邊重明、岩田孝、松本史朗、沖和史といった第一世代の先生方により先鞭がつけられ、続く第二世代を代表する稲見正浩、小野基、林慶仁といった先生方に引き継がれました。

プラジュニャーカラグプタ研究会の想い出

 このプラジュニャーカラグプタ研究会は、1997年、折しも広島で第3回国際ダルマキールティ学会が開催された年に東京学芸大学にて発足したものです。  林先生に誘われ、学芸大の稲見先生の研究室を訪ねて、ラトナキールティの『多様不二照明論』の読書会がスタートしたことがきっかけでした。  その後、野武美彌子氏も参加し、稲見先生を中心に、難解で知られる『量評釈荘厳』知覚章冒頭が読み進められていきます。  幸いに、渡邊重明先生によりパトナに所蔵されてある同書のサンスクリット写本影印版が出版されたことで、刊本の読みを訂正し、ジャヤンタ・ヤマーリの両注釈(いずれもチベット語訳のみ現存)を参照しながら、解読することができました。  その成果は、四名の共著として「プラジユニャーカラグプタにおける二種の認識対象と認識手段」の題名で『南都仏教』第81号に掲載されています。  その後、小林久泰氏、三代舞氏など、プラジュニャーカラグプタを専門に研究する若手研究者の参加により、研究会の裾野は広がっていきました。発足から実に16年余り。インド哲学関係では、これだけの長期にわたり、単独の思想家を対象とした研究会が継続されたことはなかったでしょう。偏に、主催者である稲見先生のご尽力の賜物です。

今回の拡大プラジュニャーカラグプタ研究会

 さて、「拡大プラジュニャーカラグプタ研究会」は、定期メンバー以外の参加者も交え、各自の研究発表なども織り込みながら、プラジュニャーカラグプタの議論を皆で一緒に読み、考えようという趣旨で開催られる特別版。最近では、3月末というのが定番になっていますが、一昨年は震災のために開催されず、昨年は、私自身の体調不良のため参加することが叶いませんでした。  というわけで、今回は2年ぶりの参加で、懐かしい面々と旧交をあたためました。研究発表では、小野基、三代舞両氏の発表が行われ、また、松岡寛子氏の研究対象であるシャーンタラクシタの『タットヴァ・サングラハ』(真実綱要)第23章(外界の考察章)に関する集中討議が行われました。  また、継続して解読が進められている、『量評釈』知覚章、第3-4偈に対する、プラジュニャーカラグプタの注釈箇所についても、稲見先生を中心に活発な討議が行われました。今回の箇所は、唯識思想と間主観性の問題を考えさせられる議論を含み、感想は一言。プラジュニャーカラグプタはやっぱり面白い!

というわけで…

 満開の桜が咲く東京学芸大学のキャンパスの一角で、「プラジュニャーカラグプタにとって外界っていうのは…」とか、「やっぱり、この箇所のsvasamvedanaは『自己認識』とは訳せないよね…」とか、「二人のティミラ眼病者には共通に二月が見えるわけでしょ」とか、なかなか楽しい議論が飛び交っておりました。キャンパスを歩く学生には異様な集団に見えようとも、その集団こそ、この古代の哲学者の魅力に憑りつかれた面々なのです。  この文章を読んで興味をもった学生さん、君も一緒にプラジュニャーカラグプタやってみないかい?

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