教員紹介

もりやま しんや

護山 真也

哲学・芸術論 教授

教員 BLOG

一覧を見る

エリ・フランコ先生をお迎えして

 11月28日より12月7日まで、短い間ではありましたが、ライプチヒ大学教授エリ・フランコ先生を招聘し、信州大学でも講義・国際交流シンポジウムにと大活躍していただきました。以下、その報告です。

インド哲学史の時代区分について

 12月4日(火)の10:40-12:10には、「インド哲学史の歴史記述と時代区分について」(Historiography and Periodization of Indian Philosophy)と題する講演を行っていただきました。  古代・中世・近代というある程度の時代区分が共有される西洋哲学の場合と異なり、インド哲学の場合には、これまでその時代区分に関する明確な定説をもつに至っていません。  19世紀にインド哲学研究を牽引したパウル・ドイッセン(Paul Deussen)の『一般哲学史』では、ウパニシャッドの哲学がその中心とみなされ、(1)ヴェーダからウパニシャッドまでの時代、(2)ウパニシャッドの哲学の時代、(3)それ以降の哲学という三区分がなされています。この背景には、彼が師事したショーペンハウアーの影響があるわけですが、それにしても、これはやはり極端な見方と言うべきでしょう。  一方、インド哲学研究に不滅の業績を残したウィーン大学の碩学エーリッヒ・フラウワルナー(Erich Frauwallner)の場合はどうでしょう。彼は厳密な文献学の手法で、様々なテキストの批判的校訂、翻訳をなしとげました。未完に終わった彼の『インド哲学史』(Geschichte der Indischen Philosophie)は、一部の研究者の間ではまさに「聖典」として崇められるべき充実した内容を誇っています。  ところが、フランコ先生に言わせれば、彼のナチス・ドイツへの意識的な加担という経歴を合わせて考えるとき、そのアーリア人信仰がインド哲学史の時代区分に微妙な影を落としていることを見逃してはならない、ということでした。すなわち、紀元後800年頃までをインド哲学の第一期とみなし、それは学術的・無神論的なアーリア的文化を受け継ぐものであったのに対して、続く800年以降の第二期には非学術的・神学的な非アーリア的文化に移行した、という歴史観には、フラウワルナー自身のアーリア優位主義の見解が潜んでいる可能性があるということです。  個々の研究者の個人史を丹念にたどりながら、各人が提示した時代区分の仮説を検証し、批判的にその価値を見定めていく、まさに文献学のエッセンスが詰まった講義でした。惜しむらくは、時間の都合により、先生自身が考える新たな時代区分については提示していただけませんでした。しかし、講義の余談として挿入された個々のエピソード(ライプチヒの出版社ブロックハウスとインド哲学とのつながり等)はいずれも興味深いもので、私個人は大いに楽しませてもらいました。

Willkommen Leipzig!

 同日の夕方17:00-18:30には、人文ホールにて国際交流シンポジウムが企画されました。ドイツ語学の磯部先生、英語学の花崎先生、芸術コミュニケーションの船津先生にご協力いただきながら、フランコ先生、ならびにドイツ語学に滞在しておられたライプチヒ大学のダーヴィッドさんのお二人に、ライプチヒの街とその大学の魅力について語ってもらう、という内容でした。  菊池先生に作成いただいたポスターの効果か、広報活動にご尽力いただいた花崎先生のお力によるものか、会場は満員、市民の方や他学部の学生を含む70名ほどの参加者で溢れておりました。フランコ先生はパワーポイントを使用して、ライプチヒ大学が誇る歴史的建造物について熱く語っておられました。  ダーヴィッドさんは、わざわざ動画を用意してくださり、ライプチヒでのご自身の一日の様子を素敵なBGMをつけて見せてくださいました。折しも、クリスマス前のアドヴェントの季節、一般家庭の中でクリスマスを迎える準備がどのように進むのか、そしてクリスマス市の華やかさ、そこで飲まれるグリューワインについて、興味深い紹介がなされました。  質疑応答は、哲学思想論の三谷先生からの「〈ライプチヒ〉と〈しなの〉は実は共通の語源をもつ」というびっくりのコメントからスタートしました。驚き、桃の木、科(しな)の木(=菩提樹)です。その他、これからライプチヒに留学希望という理学部の学生さんからの質問や、旧東ドイツにおけるキリスト教信仰など、様々なテーマが論じられました。  唯一の反省点は通訳(=私)の力量です。今回は花崎先生に大いに助けられました。次回(?)までには、会場から野次が飛んでこないよう、精進いたします。

懇親会

 シンポジウム後は、お待ちかねの懇親会。花崎先生のご尽力で樽酒を用意していただき、ゲストのお二人に鏡開きをしていただきました。実は二人とも大の日本酒好き。その二人のもとへ、アルコールの力で勇気を振り絞った学生さんたちが次々と押しかけ、英語・フランス語・ドイツ語・日本語で様々な質問をしていました。、これぞ、国際交流のあるべき姿じゃないでしょうかね。  皆さん、本当にありがとうございました。  なお、懇親会に関しては、人文学部同窓会・後援会からご寄附を賜りました。ここに厚く御礼申し上げます。

トップページ 教員紹介 護山 真也 ブログ エリ・フランコ先生をお迎えして

ページの先頭へもどる