かない ただし
金井 直
哲学・芸術論 教授
教員 BLOG
一覧を見る『ジョルジョ・モランディの手紙』
ジョルジョ・モランディをご存じでしょうか。
20世紀イタリアを代表する画家。
生涯かわらず故郷ボローニャのアトリエで、ひたすら壜や壷を描き続けた孤高の芸術家。
変貌を拒絶することで、前衛の時代に対峙し続けた究極の自然主義者。
その静穏な画風は、いまなお多くの絵画ファンをひきつけて止みません。
本書はモランディが友人の芸術家や批評家らに宛てた書簡をまとめたもの。
けっして「孤高」に閉ざされることのなかった、画家の芸術的交流の豊穣が伝わってくる内容です。
さらには、一見変化を避ける様式の安定のかげに、いかに入念な表現の選択があったのかも、行間から感じ取っていただけるはずです。
私は補論という体裁で「ヴェネツィア・ビエンナーレとモランディ」というエッセイを寄稿。
案外アクティヴなモランディの動きに焦点を当ててみました。
じつはこの出版、モランディ展の日本での開催にあわせて進めていたのですが、同展はこのたびの震災によって延期となりました。
本書を手に展覧会場に出かけ、じかにモランディとの「対話」を楽しんでいただける日が、少しでも早くやってくればと願っていますが、無論、それにもまして、被災された方々の日常の回復を願って止みません。
私のような美術の教員にできることは限られていますが、それでもできることを積み上げていきたい。
できたての本のページを繰りながら、気持ちをあらたにしています。
岡田温司編『ジョルジョ・モランディの手紙』みすず書房 2011年