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かない ただし

金井 直

哲学・芸術論 教授

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村瀬恭子 Fluttering far away/遠くの羽音

森の奥で、あるいはその入り口で、少女や鳥、蝶、蛾が、大気、水、光の流れや巡りに包まれる様を、淡い色調と、繊細でときに果敢な筆致で捉えたタブローの数々。村瀬恭子さんの作品は、視触未分の感覚やドローイング的な初発性をたたえつつも、そうした流動的な傾向を、絵画というジャンルの境界内に留め置く経験と技術、意識において、他に際立って力強く、魅力に満ちたものです。それゆえか、近年の現代絵画展において、彼女の作品は、ポスト近代の拡散する表現と「絵画」の架け橋として、たいへん重要な位置を占めているように思います。

 豊田市美術館における今回の個展は、2000年代の作品を中心に、最新作まで、じっくりと鑑賞できる充実した機会です。とくに注目したいのが、≪100万年Cave≫と名づけられたウォールドローイング。同作は一種のインスタレーションであり、展覧会が終われば消失します。 じつは私も以前、村瀬さんとお仕事をご一緒したとき、ウォールドローイングをお願いしたのですが、会期が終わり、作品がその姿を消す段になると、とても、とてもやるせない気持ちになって・・。そんなわけで、たくさんの方に豊田で≪100万年Cave≫を見て、記憶にとどめていただきたいな、と思っています。

 

「村瀬恭子 Fluttering far away/遠くの羽音」


 豊田市美術館 2010年4月10日―6月13日

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