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いとう つくす

伊藤 盡

英語学 教授

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『教室の英文学』(研究社刊) 英語と文学をちゃんと教えます!

英語のタイトルはApproaches to Teaching English Literature!

研究発表の準備中に届いた『教室の英文学』

上掲の本が「日本英文学会(関東支部)編」として、上梓されました!

で、ちゃんと英語のタイトルもあるんだ、って。ほぼ全部、中身は日本語で書かれているのですが。
こういうところも、日本英文学会、という学会に所属する研究者たちの主な考え方が表れていると思います。

つまり、日本語で書かれた本であっても、海外の人たちへのアクセスのとっかかりを必ず作っておく、というところ。

発起人は、日本英文学会の中心的な研究者たる原田範行先生と阿部公彦(まさひこ)先生。
イギリス文学もアメリカ文学も、英語で書かれた文学作品を大学で教えるとはどういうことか、が分かり易く、実例を伴って解説されています。
英語の会話ばかりを「習う」だけで本当にいいのか?といったところにも主眼が置かれています。

僕は、この本の中で、「ファンタジー文学を教える」一章を書きました。
信州大学人文学部では、僕は「言語学」の人間と思われているようですが、そうではありません。僕は「文献学」の人間だからです(英語ではphilologyといいますが、このphilologyを英和辞書で引くと「言語学」と載っているのです。困ったネ)。

ですから、「言語学」と「文学」とを分けて考えるようなことはしません。やや異なるアプローチではありますが、本書には、奥聡一郎先生という、やはり言語学と文学研究を結び付ける研究手法と取られる先生も執筆しています。
一言で「文学研究」といっても、いろいろな研究方法があるものなのです。

文学は『役に立つ』から教えるし、研究するのだ、という至極まともな考え

どこぞの阿呆が、大学で文学を研究しても何もならん、と言ったとか、しかもその御仁は自分で「文学」なるものを書いたとか書かなかったとか。
文学といっても、ピンキリである。しかし、一つだけ確かなことは、文学は楽しみでもあるし、役にも立つ、ということだ。
文学を好きだというと、「クライ」とか言われるそうだが、それは役に立たないことだろうか?
僕に言わせりゃ無駄に明るいことこそ「役に立たない」。
むしろ、ものを考えることを拒否するから「害になる」と考えている。
タロットカードに Fool というカードがあるのを御存知だろう。足下に断崖絶壁の奈落が待ち受けているのに、それを見ずに、にこにこと陽気で明るい様子だ。
「明るい」ことは必ずしも「楽しい」ことと同義ではないのだ。
子どもが「真剣にものを作っているとき」笑顔は見えない。でも彼らは「楽しんでいる」ということを、保育園の保育士だったか幼稚園の先生だったかに聞いたことがあり、確かに観察をしていると、本当にそうなのだ。

文学作品を読むこと、研究することは楽しい! けれど、だからといって、馬鹿みたいに毎日毎日ニコニコ笑顔を振り向くわけではない。むしろ、そっちの方が気持ち悪くないだろうか?
むしろ、知的好奇心を満足させ、知的快楽を学ぶことを知らしめることが、大学の教員に求められてくるのである。

最近は、まともに考えない人が、政治家のオエライサンになったりしているから、まるで考えないほうが偉くなれるのではないかという考えを若い人たちは持つのかも知れないが、それは、やはり間違いである。
なぜならば、世界の歴史を見ても、「偉い政治家」が本当に尊敬されているわけではない。ヒットラーがまさにその恰好の例であることは、現代史を見れば明らかなのだから。
むしろ、文学、特に風刺文学などを研究し、学ぶことこそ、本当に「偉い人」が誰なのかを見抜く手立てを身につけることになろう。それこそ「役に立つ」ことではないだろうか?

文学を学ぶことを「役に立たない」などという人は、自分がそのように「文学で風刺される」側の人間であることを露呈しているに過ぎないのである。

この本を書いている人たちは、日本を代表する英文学研究者が勢揃いです。

佐々木徹教授(京都大学)と巽孝之教授(慶應義塾大学)は英文学・アメリカ文学を、いま、日本で研究するとはどういうことなのか、という問への答を示してくださいました。

第1部、原田範行教授(東京女子大)、斉藤兆史教授(東京大)、小林久美子准教授(法政大)は、文学作品を使った英語、英作文、英会話の授業を示しました。阿部公彦准教授(東京大)、北和丈准教授(東京理科大)、中村哲子教授(駒澤大)小川公代准教授(上智大)、奥聡一郎教授(関東学院大)は、詩を読み、創作し、アクティブラーニングに取り組み、多読をし、ITを使う英語の授業を展開しました。

第2部では、現代社会との関わりを抑え(中身亜佐子教授(一橋大))、性差の問題を意識させ(越智博美教授(一橋大))、英文学テクストを換骨奪胎することで学ぶ知的作業をさせ(丹治愛教授(法政大))、アメリカの時代と社会が文学に与える影響あるいはその逆を理解させ(新田啓子(立教大教授))、映画やテレビドラマへの翻案の妙を把握させ(新井潤美教授(上智大))、演劇の現代的意味を考えさせています(岩田美喜教授(立教大))。

第3部の前半では、時代毎に分かれて英語文学
を語っています。中世(唐澤一友教授(駒澤大))、シェイクスピア(井出新教授(慶應義塾大))、イギリス詩(アルヴィ宮本なほ子教授(東京大))、アメリカ詩長畑明利教授(名古屋大))、18世紀小説(武田将明准教授(東京大))、19世紀小説(高桑晴子准教授(お茶の水女子大))、20世紀小説 (秦邦生准教授(青山学院大))、アメリカ19世紀小説(中野学而准教授(中央大))、20世紀アメリカ小説(諏訪部浩一准教授(東京大))そして、非英米の英語文学(中村和恵教授(明治大))が連なりました。

第3部の後半では、研究ジャンルに分けて語られました。
ファンタジーはわたし、伊藤盡(信州大)が担当。その後、児童文学(佐藤和哉教授(日本女子大))、文学批評(田尻芳樹教授(東京大))、翻訳論(武藤浩史(慶應義塾大))、比較文学(後藤和彦教授(東京大))についての各論が掲載されました。

いかがですか? これでもうおなかいっぱいでしょうか?

巻末には、執筆者たち、一人が一冊ずつ、学生への推薦図書を紹介しています。こちらも、それぞれの先生方の背景が見えて、面白いですよ。

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