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いとう つくす

伊藤 盡

英語学 教授

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D & Departmentがデザインする探訪 in 松本(長野)

信州大学 人文学部生の必読の書?!

ナガオカケンメイとD&Departmentが「旅」をデザインする、いや、デザイナーの視点を持って、「旅」する場所、土地に生きる「今のデザイン」を紹介する本が出た。 その第4弾が、「長野県」 松本に暮らし始めて、ここに暮らす面白さというか、暮らす工夫というか、この空間や場所というものを、ここに住む人々がどのように「今とこれから」を目指して「デザイン」しているのかを、いちいち確認する日々が続いている。そのような私にとって、この本に記されている松本の魅力は、まさに正鵠を射た!という気持ちを持ちながら読み進めた。 もちろん、長野県に住み始めてまだわずかの私には、県内の他の地域に関する情報も大いに勉強になった。 しかし、なんと言っても、この本を書店で見つけた時、あのナガオカケンメイとD&Departmentが、今私の住む土地を、外部の視点からデザイン(単なる「美的」デザインや「効率的」デザインといった意味に限らず、生き方、人との関わり方のデザインも含む)を捉え、紹介するという企画自体に驚きと期待を胸に覚えたのである。 そして、実際に長野市に信大生が経営するギャラリー豆蔵のことなどが書いてあるのを読み、松本市に住む信大生、特に人文学部の学生のどれくらいの諸君がそのような事実を知っているのかなあ、と感慨に耽った。 つまり、この本は「旅」や「観光」を、これまでの在り方とは異なり、「通」だからこそ、「生きる」ことを大切にする人たちにこそ、ここのところを見て欲しい、と思われる場所や人間を紹介する本なのである。 信大には、当然、長野県の出身者が多いわけだが、他県出身者であっても、現在は長野県内に住んでいるのだから、ナガオカケンメイの視点から彼らの郷土がどのように見えるのかを知る、いわば、自分たちを知る鏡の1つとしてこの本を皆が読んで欲しいと思った。 8Jan2011 追記訂正: 長野県は d design travelの第4弾でした。第1弾と書いてしまったので訂正します。 第1弾は北海道。続けて鹿児島、大阪でした。

ナガオカケンメイとD&Department

そもそも、なんでこんなにナガオカケンメイに私が入れ込んでいるかと言えば・・・。 以前の職場で「キャリア指導」という、所属するコースの学生への職業意識を高めることを目的とした演習授業を担当したことがあったのだ。 そして、その時に私がテキストとして用いて、他の先生方にも推薦した本が    ナガオカケンメイ著『ナガオカケンメイの考え』(アスペクト、2006) だった。現在は新潮文庫から再版されているけれど、アスペクト社の本はペーパーバックの、奇藤文平氏による想定デザインがなされたカッコイイ本だった。 それ以前から、東京の田園調布近くの環八通り沿いにあったD&Departmentの店舗兼レストランには何度も足を運ぶことがあり、ナガオカケンメイという人間のデザイン&コンセプトを貫いた姿勢に、同世代の人間としてえらく感動し、またこちらも頑張らなきゃと、良い意味での刺激を受ける発憤材料となっていた。 そのレストランで出される料理は、無農薬野菜、人工飼料を使わず飼育された家畜の肉などといった健康志向の今流行りの考え方を先取りしたもので、同世代ならば誰もが望む、誠実な農法による食材だけが使われていて、しかも腕の確かな料理人がその場で調理する厨房が目の前に見えるのである。 使われているソファやテーブル、カトラリーや食器は、オールド・デザインのものがほとんどで、兎に角落ち着く。給仕をしてくれるスタッフの意識も高い。 もてなしの心配りが行き届いていて、こちらに五月蝿く思われるような余計なお喋りはしないけれど、こちらが頼みたいと思った時にはすぐにサービスをしに来てくれる。リラックスできる雰囲気と、美味しい料理がいつでも味わえる、そんな店だった。言わば、疲れた心と体に英気を取り戻させてくれる、'restaurant'という言葉の字義通りの場所だった。 その建物の階上は、ディスプレイ・スペースと一体となった店舗となっており、食器から文具、家具などの、プロダクト・デザインとして認められたものだけを選りすぐった製品が、整然と並べられていた。 中古の家具から、デザインされてから何十年も変わらぬフォルムを保つ「道具」が、国内外を問わずに陳列されていた。料理人から設計技師まで、職人がプロの仕事をする時に、これはよい、と思って使い続けた結果、現在でも生産が続いている製品である。 ある意味、このような店は、東急ハンズで育った我々の行き着く究極の理想の店の形態に近いのかも知れない(槙村さとる『リアル・クローズ (Real Clothes)』(集英社)が描くデパート業界も、ある種、そのような理想的な「店」を構築しようとする人々を描いた物語だと思う)。 そんなコンセプトを持った店が、同年代の人によって起業され、実際に経営されている現場を目の当たりにした時、これからの日本の「しごと」人のあるべき姿を見た思いがしたし、そこで、『ナガオカケンメイの考え』を、大学生に読んで欲しいと願ったのだった。 今後の自分の未来や職業プランを、既存のキャリア・プランに左右されずに自分の進む道を選んだり、仕事をする上での心構えなどといったものを、将来ある学生諸君のための food for thought になったらよいと願ってのことだった。

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