いとう つくす
伊藤 尽
英米言語文化 教授
教員 BLOG
一覧を見る【新刊】『探究するファンタジー:神話からメアリー・ポピンズまで』
風間書房から先日上梓されたばかりで、ほやほやの湯気がたっているほどの新しい本が送られてきました。これから関係各処に送付する手はずになっています。
これは、昨年度と今年度(2008&2009年度)にわたって、成蹊大学で学部を越えた国際教養科目「歴史に学ぶ(神話と中世のファンタジー)」という科目として、オムニバス形式で数名の教員(その中に僕も含まれるわけです)が行った講義を元に、新たな論文としてまとめ直したものの集成です。
内容は、
- 神話学の泰斗吉田敦彦先生の「神話とファンタジーの始まり:西洋と日本」 (pp1-45)を筆頭に、
- 三浦國泰著「ニーベルンゲンの系譜:その循環構造」 pp46-75
- 多ヶ谷有子著「聖杯探究におけるファンタジー」 pp77-116
- 田辺春美著「中世英国ロマンス『オルフェオ卿』と『ローンファル卿』の構造分析」 pp117-53
- 正岡和恵著「"There's magic in thy majesty": 『冬物語』における彫像の魔術」 pp155-80
- 伊藤盡著「トールキンのファンタジー:想像力の源泉としての中世英語・北欧語文献学」pp181-225
- 大熊昭信著「メアリー・ポピンズは魔女か:ファンタジーとしての児童文学の転覆的効果」pp227-67
- 遠藤不比人著「精神分析とファンタジー/幻想:カズオ・イシグロ『ある家族の夕餉』における 『臍』」pp269-90
の八編の論考が掲載されています。
とりまとめて下さった田辺春美成蹊大学文学部教授に感謝を献げたいと思います。
この論題からもわかるとおり、神話時代から中世ドイツをめぐり、中世イギリスからシェイクスピア、20世紀のイギリス文学作品に至る、ファンタジーの系譜を辿ったものとなりました。
英文学研究者のみならず、文献学者(言語学者)がファンタジーとみなされる作品を扱っていることも、この編著のちょっとして特色かも知れません。 御興味のある方は是非手にとって読んでみて下さい。