教員紹介

はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・芸術論 教授

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中国関係

春節の紹興・余姚

蕺山書院(紹興)

春節には中国旅行をしてはならない――ずっと守ってきたこの戒めを、このたび破ってしまいました。信じてもらえないとは思いますが、最近の大学教員はとても忙しく、昨年も会議と会議の合間をぬって無錫・常州を訪れました。今年もほぼ同じ時期にしか行けなかったわけですが、昨年とは異なり、ばっちり春節期間と重なってしまいました。その計画を(このブログでの最多出場を誇る)中国の若手研究者Sさんに伝えたところ、なんと、全日程、同行してくださることになりました。Sさんが同行してくれなければ、ちゃんと調査地点を廻ることはできなかったことでしょう。深謝申し上げます。

応天塔から見下ろす紹興

初日、成田空港から杭州空港へと飛びました。中国的には「大晦日」です。Sさんが予約してくれたホテルにチェックインし、そのホテル近くに住んでおられるQ先生のお宅で「年越し」の夕食をいただきました。先生とは、私が1996年に杭州で在外研究を行った時からの付き合いですが、当時は小学生だった息子さんが、なんとも立派な社会人になっておられ、感動しました。当時も先生のお宅に呼ばれたことがあったのですが、行っている間、息子さんは延々と「宿題」をやっていて、中国の小学生は大変だなあと思ったものです。その時の研鑽がいまにつながっていることなのでしょう。「昔は、上海から杭州まで4時間以上かかっていたんだ」とか、「昔は鉄道の切符がなかなか買えなくて、旅行中に必ず〈切符を買う日〉を見込んでないといけなかった」とか話したら、息子さんに笑われました。Q先生との間で、この20数年の間に起こった中国社会の変化について話が弾みました。

今も人民に慕われる王陽明(余姚)

翌日、つまり「元日」から、紹興と余姚を廻りました。紹興では、劉宗周という思想家が講学活動を行った「古小学」だとか、彼と袂を分かったとされる門人たちが集ったとされる「白馬山」とか、もう何も残っていない場所を探して廻りました。Q先生のご教示とSさんの協力が無ければ、「見つける」ことができなかったでしょう。本当に何も残っていませんでした。ただ、明代に既に削られて姿を消していたとされる「白馬山」周辺に、少しだけ小高い部分が残っていて、「ここに山が?!」と感動したり、地図を見てまさかとは思っていましたが、本当に、「白馬山」と劉宗周の居住地(一枚目の写真の近辺)とが「目と鼻の先」にあったため、「本当に袂を分かっていたら、こんな近くに集うか?!」と疑念を覚えたりと、なかなか収穫の多い調査となりました。「古小学」があったとされる地域に「塔山」があるのですが、15年前に調査に行ったときは、周辺が工事中で立ち寄れませんでした。今回は、山のふもとに修復されていた「章学誠故居」を参観した後、応天塔に昇り、紹興の街の作りをじっくり観察することもできました。

龍山公園の四賢祠(余姚)

余姚では、劉宗周と交流のあった人たちが創設した「姚江書院」関連の場所を廻りました。これもQ先生に教えていただいた情報をもとに、最初にあった一帯と後に移転した一帯を見て廻りましたが、どちらも一切何も残っておらず、後から写真を見ても「ここはどこ?」状態に陥ること必定です。ここではブログ映えを優先し、王陽明故居前の銅像と余姚が生んだ4人の賢人(すべて名前を言える人は相当な「余姚通」です)をまつった祠の写真を掲げておきます。

今回、Sさんのおかげで、移動と宿泊先の確保は何の問題も生じなかったのですが、夕食に関しては、レストランがどこも満杯状態で、難儀しました。こちらに関しても、Sさんが同行してくれていなければ、「カップラーメン」で済ますはめになるところでした。TVを見ていたら、ご老人が「中国人がこんなに豊かな生活ができるのは歴史上始めてだ」と語っておられました。もちろん「やらせ」のまじったコメントでしょうが、半分以上は「本音」であるようにも感じました。また、今回特に抱いた「隔世の感」は、Sさんがありとあらゆる支払いを「スマホ決済」していたことでした。帰国後に、中国関係の商業誌に「今の中国で、どこまで現金が使えるのか?」という内容の記事を見かけました。「どこまでスマホ決済が可能か」ではないところに、今の中国の状況がうかがえます。そういえば初日にQ先生の息子さんに「日本は現金主義の国だ」と言って不思議がられたな、そりゃあこれだけスマホ決済が徹底してくれば、わざわざ現金を使いたがる人々は「不思議」に見えるだろうなあ、と実感した次第です。ただ、そうなると、春節以外の時期でも、外国人がひとりで旅行することは難しくなります。中国の人たちは、タクシーもスマホアプリで呼んでいますので、20数年前とは全く質の違う(外国人にとっての)困難が出現しつつあるような気がします。

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