教員紹介

はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・芸術論 教授

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中国関係

恥だが役に立つ常州調査

高攀龍濯足處(無錫・太湖湖畔)

中国に20年来の友人がいます。友人なんて気安く言えないぐらい、えらい人になってしまいましたが、20年前に私が中国で在外研修を行っていた際、彼は博士論文執筆中だったにもかかわらず、私が調査に行きたいと行った地点に同行してくれて、現地にいる彼の知人に車の手配等を頼んでくれたりしました。先日のブログに登場したSさんから、私が無錫・常州を私が訪れることを聞いた彼は(彼は、偶然にもいまSさんの上司なのです)、現地の知り合いに連絡して車の手配をしてくれました。苦労して調査を行ってこられた日本の先達諸賢に対し、なんだか申し訳ないような、恥ずかしいような気分を覚えましたが、常州の調査地点が予想以上にへんぴな場所にあったため、彼(および彼の知り合いさんとその人の部下の運転手さん)の厚意が無ければ、目的を達成することができませんでした。同行してくれたSさんも含め、皆さん本当にありがとうございました。

惲南田墓(常州武進)

最近、明末に活躍した思想家である劉宗周の思想に取り組んでいます。劉宗周は、『明儒学案』『明夷待訪録』の著者である黄宗羲の師なのですが、前回のブログで言及した惲日初という人(彼も劉の門人)は、その黄宗羲から「師説が分かっていない!」と批判されました。そのこともあってか、資料もあまり残っていませんし、事績も詳しく分かっていません。ただ、この惲日初の息子が、清初を代表する文人画家である惲寿平(南田)なので、そこから調べていったら何か分かるかも知れないという、かなりいい加減な確信に従って、江蘇省常州市武進地区に行ってみました。こういう時にはやはり「百度地図」が役に立つもので、「惲南田墓」「惲南田紀念館」という場所を事前に地図で見つけていました。地図で見た時には、歩いて回れそうな印象でいたのですが、Sさんのスマホと友人の知り合いの部下さんの車が無ければ、今こうしてブログで報告することができなかったかも知れません。

惲南田紀念館(常州武進)

特に惲南田墓は、田んぼの真ん中にぽつーんとあって、一人では確実に見つけられなかったでしょう。残念ながら入り口に鍵がかかっていたため、中に入ることができませんでしたが、門前にあった説明書きによれば、惲南田の父親、つまり惲日初の墓もここにあったようです。隙間から写真を撮らせていただきました。そこに比べれば、惲南田紀念館は街中にありましたが、川なのかドブなのか分からない真っ黒な水路と工場に囲まれていて、「ぽつーんとある感」は似たようなものでした。常州の中心地からもけっこう遠くて、やはり地図だけでは分からないものだと(今更ながら、呑気にも)実感しました。

天寧寺宝塔から見下ろす常州市街

その後、常州市天寧区に移動し、天寧寺というお寺を参観、そこに建っていた巨大な塔から、常州市街地を遠望しました。本当にちゃんと人が住んでいるんだろうかと疑いたくなるくらい、巨大な建物が林立しています。下にいた時は、「中国には珍しく青空が見えているなあ」と思って見上げていたのですが、塔の上に行ってみると、なんだかスモッグがかかっていて、変な臭いもしました。PM2.5を大量に吸い込んだ気がして、早々に下におりました。常州博物館という施設も参観し、ショップで惲南田関連の書籍を購入することができました。中国の皆さんに頼りっきりで恥ずかしい限りではありましたが、とても役に立つ調査になりました。中国ではこういう人と人とのつながりがとても重要なんだ――冒頭で紹介した私の友人が20年前に私に教えてくれたことを再確認させてもらった旅でした。

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