教員紹介

はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・思想論 教授

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中国関係

「唱紅歌」

暑い日が続いています。思い返してみますに、昨年のサバティカルの期間中では、7月中旬から8月初旬にかけての頃が、身体的にも精神的にも一番しんどかったように思います。なんと言っても、連日38度を越えるような気温で、さらには松本には無い湿気も体に堪えました。宿舎の部屋にはクーラーがあったのですが、明らかに設置以来一度も手入れがされていないその機体からは、かび臭ーい風と、原因不明の重低音とが絶えず発し続けられました。自分の部屋のクーラーを切っても、よその部屋の重低音が襲いかかってくるので、不愉快きわまりない毎日でした。

去年の今ごろは、もう一つ、何となく嫌な気分をもたらす事がありました。高速鉄道の事故ではありません(あれは、「何となく」というレベルではありませんでした!)。テレビを付けるたびに耳にした「唱紅歌」の連呼です。「共産党の歌を歌おう!」とでも訳したらよいのでしょうか、テレビで盛んに、数十年前の、毛沢東の時代の、懐かしい(のだと思います)「革命歌」を皆で歌い合う、そんなコンテストのような番組が流されていました。そういうものに何の愛着もない私は、そんな番組ばかり流れてきて不愉快な気分でした。重慶辺りの地方政治家が呼びかけたものらしい、といった程度の認識しかありませんでしたが、中央政界入りが確実視されていたその政治家はその後、部下の不始末の責任を問われて失脚しました。その後の経緯は皆さんご存じの通り。「唱紅歌」の嵐から一年経って、驚くような彼の「罪状」が次々と明らかになっていく事態に、やはりとまどっております。

恐らく、まだ明らかにはなっていない政治闘争が、激烈に、速やかに行われたのでしょう。薄熙来というその政治家が犯した罪は、是非とも白日の下にさらしてもらいたいと思います。ただ、その一方で、「唱紅歌」の嵐は、単に野心的な政治家によって無理矢理もたらされたものではなかったのではないか、という思いも残り続けています。ノンポリ(死語?)の外国人には分からない、ある種のカタルシスがあの熱狂の中にはあったのかも知れません。今回の事件に際し、薄熙来を放置したら文化大革命が再来するかもという危機感が中国のトップにあったようですが、しかし薄熙来を追放したからといって、その危険が去ったわけでもないところに、今の中国の危うさがあるように感じます。

最後に、お気に入りの図案を一つ。アメリカのオバマ大統領が人民服を着ている絵柄で、中国の観光地でよく目にするものです。「為人民服務」、つまり「人民に奉仕せよ」という毛沢東の字も見えます。毛沢東は中国語読みで「マオ・ザ・トン」なので、このキャラクターは「オバマオ」というのだそうです。これこそが今の中国のありかたを象徴する図案だと思えてなりません。「オバマオ」が今後どんな歌を歌うのか、注目し続けたいと思います。

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