教員紹介

はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・芸術論 教授

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中国関係

杭州便り 最終回

京杭運河

明日18日、日本に戻りますので、「杭州便り」は今回でお終いです。ありきたりの表現ですが、長かったようで短かった一年間でした。かけがえのない機会を与えてくださった信州大学人文学部の皆様に、改めて御礼申し上げます。また、受け入れ先である浙江大学はもとより、いろいろな形で交流してくださった杭州師範大学、浙江省社会科学院、杭州市社会科学院、上海復旦大学の先生方や学生さんたちにも感謝いたします。皆様のおかげで、本当に充実した研究生活を送ることができました。他にもお礼を述べないといけない方々は多くいるのですが、とてもここには書ききれません。本当にありがとうございました。

胡雪岩故居

15年ぶりに杭州で生活をして、様々な面で格段と生活しやすくなったことを実感しました。私が中国を最初に訪れたのは1991年の夏でした。上海虹橋空港からホテルに移動する際、既に辺りは暗くなっていたのですが、おおぜいの老百姓の方々が道ばたでスイカを食べていました。スイカの食べ殻が延々と道ばたに山積していた光景は、今でも忘れられません。切符を買うのも一苦労で、上海の街を友人と駆けずり回って杭州行きの切符を入手しました。その頃は上海-杭州間が早くても5時間かかる上に、謎の遅延・停車が相次いで、予定よりもかなり遅れて到着しました。それが今では、1時間以内に発車する列車の切符を駅に着いてから購入することができ、発車して1時間以内に杭州に着くことができるのですから、便利になったものです。この正月に15年ぶりに中国杭州を訪れた私の妻が「臭くない! ゴミもない!」と感想をもらしていたのが印象的でした。全くもって失礼な話ですが、正直な感想を申せば、全くその通りなのです。中国、特に杭州のような都会は、ここ最近で大きく変わりました。

西湖

日本で大々的に報道されているように、急速な変化は中国社会に大きなひずみをもたらしました。貧富の格差拡大、環境汚染、食の安全、医療問題等々、挙げればきりがありません。杭州に関して言えば、慢性的な交通渋滞、住宅価格の高騰といった問題が深刻です。道路の渋滞は、杭州の宿痾とも言うべきもので、時間帯によっては全くタクシーが捕まらない、バスも車も全く進まない、という問題に悩まされます。住宅価格に至っては、日本の大都市とほぼ同レベルです。既にバブルがはじけていると言う人もいます。杭州を心から愛する者として、杭州の今後が心配でなりません。中国では別れの際、相手に「慢走!」と声をかけます。これからの中国が、自分たちの足下をしっかりと見て、「ゆっくり」と進んでくれることを願っています。

西冷印社

成り行きで中国哲学の世界に足を踏み入れた私ですので、大学生の時には、その後の自分がこんなにも深く長く中国と関わることになるとは予想もしていませんでした。哲学が好きで大学院に進学しましたが、中国への興味はほとんど湧いてきませんでした。それが、15年前に妻と2歳の息子と一緒に杭州で生活してみて、大きく変わりました。うまく言えないのですが、「ああ、中国でも<人>が暮らしているんだなあ」と実感したのです。中国は、人と人とのつながりが、良くも悪くも濃厚です。「日中友好」という言葉にはいまだに興味のない私ですが、中国で知り合った人々、中国で見た風景は、私の中で驚くほど大きな位置を占めています。人と人とのつながり、人と場所との関わり。これが私の研究課題と言ってよいのですが、今回の滞在でもまた、この課題についてあれこれ思索・体験することができました。繰り返しになりますが、「濃い」のです。「自分は薄情な人間なんだなあ」「自分は、日本で何を見ていたんだろうか」と何度落ち込んだことでしょう・・・。恐らくこのことが今回の最大の収穫だと思います。長々と書き綴ってきた「杭州便り」はこれで終わりますが、帰国後も様々な形で研修の成果を皆さんに報告できればと思います。では、再見!

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