教員紹介

はやさか としひろ

早坂 俊廣

哲学・芸術論 教授

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中国関係

杭州便りその14

保俶塔

白堤から見た宝石山・保俶塔

杭州の「塔」というと、「六和塔」や「雷峰塔」が有名ですが、個人的には「保俶塔」が一番のお気に入りです。「六和塔」は銭塘江沿いにあって、街中からは見られませんし、「雷峰塔」は民国期に倒壊していて、現在のものは近年新たに作られたぴっかぴっかの俗物です。ただ、そういう消去法とは無関係に、西湖北岸の宝石山の山頂にそびえ立つ「保俶塔」は、まぎれもなく美しく神々しく感じられます。  なお、宿舎近くに「保俶路」という通りがあって、15年前から私はその発音を「パオシュールー」だと思い込んでいました。恥ずかしながら最近になってやっと「パオチュール-」だと知りました。でも、タクシーなどでは何の問題もなく通じていたので、あまり細かいところに気を遣う必要もないのかも知れません(単なる自己弁護ですね・・・)。

宝石山に登る

「宝石流霞」

前にも書きましたように、「山登り」がマイブームです。しかも、保俶塔の建っている宝石山は私のような根性無しでも気楽に登れる高さなので、色々な登り口を試しています。ここは思い出の場所でもあり、15年前に当時2歳の息子を連れて家族で登った山なのです(つまり、その程度の高さということです)。今年の国慶節連続休暇のときは、上界から西湖に集う民衆を見下ろしてやろうと思って登ってみましたが、山頂にもたくさんの人がおりました。もちろん、蟻のように見えた西湖の大群衆に比べれば、何と言うこともない数ではありましたが。  この宝石山は大きな岩が数多くあって、「登らないでください」という標識を無視して多くの人がよじ登ってました。私もそういう標識のないところで岩の上に立ってみましたが、確かにそこから下界を見下ろすと、痛快な気分になります。それ以上に興味深いのは、そういう岩に刻された数多くの文字です。中国の観光地を少しでも巡ったことのある人ならすぐに気づくことですが、中国の人々は昔から岩に文字(詩文やらキャッチコピーやら)を刻することが大好きなのです。中国というと反射的に「無為自然」という言葉を連想する人も多いと思いますが、私は、こういった、自然の岩山にも文明の象徴である文字を刻さざるを得ない(そうしないと気が済まない)心性が根底にあってこその、「無為自然」(あるいは「不立文字」)なんだろうと理解しています。街中にあふれかえる「文明のある礼儀正しい杭州人になろう」という看板・文字を見るたびに、中国はつくづく言葉/文字の邦だなあと実感します。そして、それは、この岩山を埋め尽くす文字の洪水と同根であるはずです。

最後に、思い出の写真を一枚。岩に刻された文字は、今もちゃんと残っておりました。

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