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長谷川 孝治准教授

長谷川 孝治准教授
人文学科 心理学・社会心理学コース
准教授  長谷川 孝治
2000年3月 広島大学大学院生物圏科学研究科博士課程後期修了(博士(学術))。日本学術振興会特別研究員、広島国際大学人間環境学部・助手などを経て、2005年10月より信州大学人文学部准教授。
主要論文として、(1)「アイデンティティー交渉過程と精神的健康との関連についての検討」『実験社会心理学研究』、38、1998、151.163(日本グループ・ダイナミックス学会「平成11年度優秀論文賞(若手研究者部門)」受賞論文)、(2)「インターネット上の自己評価と現実の自己評価との相互影響過程についての検討:両者のズレと精神的健康との関連の観点から」『社会心理学研究』、23、2007、主要著書として、「自信喪失・自己嫌悪」上里一郎(監修)2002『これから始める臨床心理学』昭和堂pp.164.178.などがある。

社会心理学というのは、社会で起こっている問題について、心理学の観点から分析すること。そんな理解でよいでしょうか。

そのとおり。あらゆる社会的なものが個人に及ぼす影響や、個人の行動が社会に及ぼす影響を研究しているんです。個人の心理を扱うのだけれど、そこには必ず社会や他者が関わっているということです。たとえば心理学は脳波を測ったりしますよね。それはその人個人の体験ですよね。それを社会心理学的にやるとすれば、たとえば誰と眠っていたらどんな脳波が出るか、考えてみる。そういう枠組みこそが「社会」ということなんです。

先生ご自身はとくに何を研究されていますか。

自尊心について研究しています。社会との関わりにおいて、なぜ人は自信をもち、また失うか、といったことです。失うケースをよく見てみると、そこには他人に強く働きかけることによって、かえって自分のことを駄目だと思い込んでしまうプロセスがみえてくる。自尊心を失うんですね。もちろんそうした現象を調べるだけではなくて、最終的には、どうやって自尊心を高めることができるのか、というところに研究としては入っていきたいんですけど。

自尊心を研究するうえで、具体的にはどんなことに着目されていますか。

たとえば「安心さがし行動」というのがあります。恋人や友人に「私のこと好き?」と訊くような行動のことです。そんなことを繰り返し相手から訊かれると、最初はともかくだんだんイヤになるでしょ。そして拒絶してしまう。そうすると、訊ねた本人はやっぱり私は嫌われていたんだと思う。要するにそもそもの疑念を現実化することになって、結果、自尊心が傷つけられちゃう。そして抑うつになっちゃう。自尊心がさがって抑うつになる、下方螺旋というプロセスです。

自分のとった方法によって逆に苦しめられてしまう。

そう。安心をさがすと皮肉にもそれが見つからない。ところでね、自尊心の高い人もおなじ「安心さがし行動」をやるんです。でも安心さがしのやり方が違うみたいなんだよね。なんというか、自尊心の高い人はさわやかにさがせている…(笑)。

わからないでもないです(笑)

この「さわやかに」をどう取り出して研究するかが難しいんですよ。

そもそも自尊心の「高い・低い」はどうやって見分けるのですか。

自尊心尺度というのがあって、その高い低いで決めます。でも項目によって揺れがあるんですよね。本当にそうなのかということは難しい。

私もそう思います。いろいろなアンケートに答えていて、自分のことを答えているのか、そうありたい自分を示しているのか、はっきりしないときがあります。絡み合うんですね。

ひとつの実験や調査ではわからないんですよ。ひとつの切り口では一面しか見えない。いくつかの実験や調査を組み合わせることによってはじめて全体像が明らかになるということです。社会心理学で切れる面も限られていて、芸術や文学を学ぶことによって明らかになる面もあるでしょう。それらが集まって、ひとつの現象を押さえることができる。そんなアプローチを全体としてやるのがこの人文学部という場所なんでしょうね。そこがこの学部の良さかな。

ゼミでは学生はどんな研究をしていますか。

自尊心や、ソーシャル・サポート、あるいはユーモアの研究…。

ユーモアですか?

たとえば、ある学生は不適切な笑わせ方という尺度をつくっているんです。本人は笑っているんだけど、実はみんなヒいているとか、そんなことありませんか。要はセルフモニタリング傾向が低い、つまり自分が見えてない、そのうえ攻撃的ユーモアが好きな人がいるんですね。そんな人の笑いの研究をしているんですよ。

おもしろそう。アプローチの多様性も社会心理学の特徴のようですね。

そう。日常的なことがらを科学的に見直し、それが私たちの生き方に活かせるというところが魅力かな。でも、社会心理学を使えばすべてうまくいくかというと、そうではないですよね。

人間の要素は様々だから。

そう。逆に、研究者になると全部社会心理学の見方をするんですよ。対人関係を。違う見方が出来ない。だから逆に生きづらくなることもある(笑)。とにかく困ったときに、もめたときに、ああ、そういえばというときに、ひとつの考え方として社会心理学を使ってもらう程度でいいんです。

専門に閉じこもらないということですよね。

自尊心がどうだとか、アタッチメントスタイルがどうこうとか、日常的に自分たちを自分たちで分析し合ったりとか、そうしているとけっきょく、一面しかみえないんですよね。だから、あまり使わない。その心がけが大切(笑)。絶対的な処方箋とは見なさないということですね。

受験生へのメッセージはありますか。

何かしたいことをすぐに決めるのではなく、欲をもって、人文学部に来て欲しいです。広い視野をもってやりたいことを探して欲しい。心理カウンセラーになりたいとか早々と決めちゃわない方がいい。

まずはいろいろ勉強してみて、ということですね。

そう。心理学について言うと、自分の問題をクリアするためだけにそれを勉強するのではない、ということをはっきりさせておくほうがいいです。

余計な直接対決になるかもしれないですよね。自分で作り出した敵がどんどん大きくなって自分を追いつめるような。「安心さがし行動」に似ていますよね。

本当は何を学んでも自分と向き合うことは可能なんです。文学を学んでも歴史を学んでも。心理学にこだわる必要はないんですよ。人文学部の分野の広がりをまずは活かしてみるといいですね。

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