お知らせ・報告

20171211中国語サロン 「お願いします」「私が電話します」の差

本日の御茶請け:ヒマワリの種“瓜子”と、市民開講参加のKさんに提供いただいた“柿干”

この日の中国語サロンは、学生、院生、参加いただいているネイティブ非常勤講師の先生方等、全部で11人参加でした。

交換留学生のHさんが日本語の授業でこんな問題があったとプリントを見せてくれました。待ち合わせ時間に現れない人物についてAとB二人が会話しているという設定です。

A:今何時ですか。
B:1時45分です。
A:もうじき映画が始まるのに、田中さんはまだ来ませんね。
B:そうですね。電話してみましょうか。

この後に続くAとBそれぞれの欄が空白となっていて、日本語で会話を展開させなさいという問題なのですが、Bの台詞「電話してみましょうか。」に続くAの答が「お願いします。」になると授業で教えられたとのことでHさんがとても驚いていたようでした。「中国人ならここは絶対“我来给他打电话。”になります」というのがHさんの主張で、それを聞いていた同じく中国人学生のW君やD君も「自分が電話します」の回答になると同意していました。同じシチュエーションでありながら、日本人と中国人とで異なる返し方をする実例が見て取れる会話問題でした。
日本語でも「電話してみましょうか」「あ、田中さんの電話番号知ってるので私がかけますよ」と返答してももちろん会話は成立するのですが、筆者の個人的感覚としては親しい間柄の方が成立しやすく、会話をしているABがやや疎遠な関係である場合「私がかけます」と言うのは少々馴れ馴れし過ぎる感があります。「田中さんはまだ来ませんね」→「田中まだ来ないなー」、「電話してみましょうか」→「電話してみよっか」の言葉遣いであったならABが親しい間柄であると認定して良いかと思いますが、ですます調を使用していることからやはりやや疎遠な間柄という印象を受けます。そしてやや疎遠な間柄である相手から「電話してみましょうか」と提案を受けた場合、それに対して異を差し挟まない、相手の行動を妨げない「お願いします」がポライトネスに適う応答語として見做されるのかなと解釈しました。親しい間柄なら「電話してみよっか」「あ、電話番号知ってるから自分がかけるわ」のように提案した側の行動を横取りするような応答が許容されるという理屈です。
一方中国語では、提案した側の行動を横取りするような形になるとしても相手に負担をかけさせまいとはっきり主張する応答がポライトネスに適うという感覚により、日本語「お願いします」の発想はないわーという中国人の反応に至るのだと予想します。外国人に提供する日本語会話授業では丁寧な表現を優先して教えるものですから、くだけた間柄による会話まで教授するのはなかなか難しい側面がありますが、会話において何が適切で何が適切ではないと判断するそのルールは、言語によって幾分違いが見られるものです。

◎中国語サロンは毎週月曜昼休み(12:10~13:00)、信大人文ホールの西側隅っこで開催しています。些細な質問でも中国語の宿題でも、中国語ネイティブの方に尋ねてみたいことがあればお気軽にどうぞ。

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