お知らせ・報告

20171204中国語サロン 阿姨から小姐姐へ

本文とは関係ない画像ですが、上:W君が普段財布に入れている中国のお寺のお守り 下:Kさんが台湾で生活していたときにお祓いで貰ったという“平安卡”

この日の中国語サロンは、学生、院生、参加いただいているネイティブ非常勤講師の先生方等、全部で8人参加でした。

紫色のコートに赤いマフラー姿の市民開講参加者Kさんの姿に、中国人交換留学生Hさんが“很洋气”を声をかけました。“洋气”とはどういうニュアンス?とKさんが尋ねると「洒落ている、格好いい」という意味合いで、それを聞いたKさんは「中国語でお洒落というのは“时髦”と私は習ったのだけど?」と言うと、Hさんや非常勤講師L先生からはそれは古い言い方で今はほとんど使わない、“那是上个世纪教科书。(それは前世紀の教科書だ)”とのことです。日本語でも「西洋風」なお洒落を示す言い回し「ハイカラ」がありますが、現在は漫画タイトル「はいからさんが通る」といったかなり限定的な用法でしか生き残っておらず、“洋气”がまだまだ広く現役で使われているのとは対照的です。

Kさんが参加している授業の資料を手にして“支起锅灶”という言い回しが出てきたけどこれはどういう意味なのですかと質問してきたので、“支”が動詞、“起”が方向補語、“锅灶”を目的語と考えると「竈(かまど、簡体字で“灶”)に鍋を傾かないようセットする」という意味ではないかと私が口にすると、交換留学生W君が付け足して言うには、「鍋を竈に置く」というその意味で、元々は古い言葉なのだけど伝統的な竈を使わない現在でもよく使うとのことでした。私の意味の見立てが合っていてほっとしましたが、Kさんが分かり難いと感じた理由は、1)動詞“支”のイメージのし難さ、2)日本語では「鍋」と「竈」を一語として扱わないこと、3)伝統的な竈を持つ生活の中で使われていた言葉が現代社会で「炊事の支度をする」イディオムとして用いられている、これらの要因が絡み合ってのことだと推察されます。

サロンの後半で人に対する呼びかけ語が話題になりましたが、幼稚園~小学校ぐらいの小さな子供が大学生に対して呼びかけるには、伝統的には自分より世代が上だと見做して“叔叔(おじさん)”“阿姨(おばさん)”を使うのが礼儀正しいとされているのですが、女性の中国人学生Hさんは“阿姨”と呼ばれるとちょっと腹が立つ、今はそういう感覚を持つ若者が多いと言いました。男性の中国人学生W君も確かに同じ感覚があると言い、中国語のコミュニケーションにおける常識、自分より“辈”=世代が上だと見做すことで敬意を表す言語習慣が一部崩れ始め、日本語のように「おじさん」「おばさん」は失礼だと考え若さを喜ぶ感覚に近似しているようです。“阿姨”ではなく“小姐姐(お姉さん)”、“叔叔”ではなく“哥哥(お兄さん)”の呼ばれ方がこの世代では歓迎されるようです。

“时髦”のように一時期だけ用いられあっさり古い表現となってしまったもの、“洋气”のように意外と生き長らえているもの、“支起锅灶”のようにイディオム(成語の域にあると言っていいかもしれません)として確立するもの、呼びかけ語の“阿姨”が“小姐姐”になったり、言葉の行く末も様々です。

◎中国語サロンは毎週月曜昼休み(12:10~13:00)、信大人文ホールの西側隅っこで開催しています。些細な質問でも中国語の宿題でも、中国語ネイティブの方に尋ねてみたいことがあればお気軽にどうぞ。

ページの先頭へもどる