お知らせ・報告

20171120中国語サロン 「春の日4月」「穏やかな生活」の違和感

御茶請けでL先生が持参した「沖縄西表島のひとくち黒糖」

この日の中国語サロンは、学生、院生、参加いただいているネイティブ非常勤講師の先生方等、全部で9人参加でした。

非常勤講師のL先生がお友だちの旅行土産だと、沖縄の黒糖を持参して来てくれました。これは中国語で“红糖”と呼び、日本語での「黒」とで色の扱いが違います。中国語ではどうして“红”と言うのか?と当日参加の中国人学生たちに聞くと「溶かした色が紅茶と同じだからでは?」という答でした。溶かした色が本当の由来かどうかは分かりませんが、中国語の“红”は、日本語の「あか・くれない」イメージより、暗ぼったい茶色みが強い色も含み範囲が広いようです。またパッケージ印刷の「西表(いりおもて)」の読み方がさすがに中国人学生たちには難しいようで、沖縄や北海道にある漢字地名の読み方は日本人にとっても難しいのだと話題になりました。

中国からの交換留学生Hさんが日本語作文授業で添削されたものを書き直したのでチェックしてくれませんかと持参し、皆でやってみることにしました。留学生が2人1組となってお互いの経歴や人となりを日本語作文で紹介するという課題なのですが、当初の作文オリジナルには魯迅の藤野先生よろしく、担当の先生によって赤字でいろいろ添削の書き込みがされています。
作文の中でHさんが書いた「春の日4月」の「春の日」は「余計なことなので書かないほうがいい」という添削を受けており、これはどういうことなんですか?とHさんが大層訝っていました。中国語では“早春一月”“阳春四月”“盛夏八月”“寒冬十二月”のように“季節+○月”の表現が一般的なのですが、日本語でこの形式をとる表現はあまりないことから「余計なこと」と感じられるのだと解説しました。一月~十月までは季節を示す二文字単語と組み合わせると四音節になり、中国語で好まれる締まったリズムを形成することも影響しているのでしょう。
また「日本にいる今はもう日常に慣れて穏やかな生活を送っている。」とHさんが書いた文については、「穏やかな生活」がかなり引っかかるとサロン参加の日本人の感想でした。Hさんは中国語で考えた“平稳的生活”を日本語で訳したということですが、「以前は戦乱の中で生活をしていたのか?」「東京から引っ越してきて今は松本で穏やかな生活を送っている、のような比較であれば成立するけど」などなど紛糾し、ではどんな語彙が日本で暮らす留学生の生活を示すものとして一番相応しいのか参加者でうーんうーんと頭を捻っていたところ、市民開講参加者のKさんが「“充実した生活”はどう?」と提案し、そう!それが一番ぴったり!!と「今はもう日本での生活にも慣れて充実した大学生活を送っている。」修正作文ができあがりました。
Hさんは日本語会話は達者なのですが、作文はやはり難しいもので、どうしても母国語と外国語である日本語との感覚のズレが存在します。「穏やかな生活」については、世界の言語の中でも文脈依存度が高いと日本語と、さほど依存度が高くない中国語との性格の差異が影響しているのかなとも感じました。外国人による日本語作文は、日本人母語話者では絶対にしない発想がそこかしこに見受けられ、実に面白いものです。

◎中国語サロンは毎週月曜昼休み(12:10~13:00)、信大人文ホールの西側隅っこで開催しています。些細な質問でも中国語の宿題でも、中国語ネイティブの方に尋ねてみたいことがあればお気軽にどうぞ。

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