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20161220中国語サロン 圣诞老人はロマンチックではないのか?

この日の中国語サロンは市民開放授業受講者の方を含め11人参加、日本人4人:中国語ネイティブ7人となった回でした。

非常勤のC先生が湖北省出身の人に“给一本书我”「私に本を1冊くれる」という言い方があると教えてくれました。最初それを聞いたC先生も言い間違いか何かと思っていたら言った人物がまた同じ表現を口にしたので、言い間違いではないと認識したということです。この表現の特徴は二重目的語の並び方にあって、中国語の標準的“普通话”では“给我一本书”のように、[二重目的語をとる動詞+間接目的語(やり取りの相手であるヒト)+直接目的語(やり取りの対象となるモノ)]の語順がスタンダードですが、間接目的語と直接目的語の位置が逆転するところが、中国語ネイティブであるC先生また研究生Jさんから見てもすごく変ってるという印象を持つようです。サロンの後に検索をかけたところ、程从荣(1998)浠水话双宾语句的特点のように、この「動詞+直接目的語+間接目的語」の語順となる湖北地方の二重目的語について指摘している文章があります。
ちなみに方言かというとそうでもない印象らしく、C先生曰くあくまでも湖北人が口にする“普通话”だとのこと。中国人にとっての“普通话”と“方言”の線引きは実に分かり難い側面があります。

4年生のH君や3年生のD君はサロンにお弁当を買って来て食べながら参加していますが、その味を話題にしているうちにそもそも「弁当」は中国語で何と言うかとなり、L先生やC先生からは“盒饭”とか日本語風の“便当”も台湾などで使うと説明がありました。するとH君が「では自分の家で作って持ってくる弁当は何と言いますか?」と質問が出て、さてそれは何だろうとL先生たちもちょっと考え込むことになりました。現在の日本語の「弁当」という単語は、自宅で作って持参するのも、業者が作ったものを買うのも、両方指すことができますが、中国語の“盒饭”は業者が作ったものを買う形式しか意味しません。数分考えたL先生は、自分の家で作って持ってくるのは“带饭”だと答えてくれました。“带”は「携帯する、持って移動する」意味合いの動詞ですから、「食事を携帯する」という動詞+目的語フレーズで表現している訳です。「弁当」のように名詞単独でスパッとその意味を示してくれる単語はどうやら存在していないようです。日本と中国の食文化・食生活の違いが、単語の在り方にも影響しているのだろうと思われました。

クリスマスや年末が近くなった時期からその方面が話題となり、クリスマスプレゼント=“圣诞礼物”、お年玉=“压岁钱、红包”などの言い回しをネイティブの先生方に教えてもらったのですが、サンタクロース=“圣诞老人”と教えてもらったD君が意外だという表情をして「“圣诞老人”ではロマンチックではないですか?“圣诞人”とは言えませんか?」とL先生とC先生に問い返しました。どうやら“老人”の“老”が、日本語的感覚からするとクリスマスのロマンチックな雰囲気とは程遠い印象を与えるようです。
「老」は日本語だと「老い」「老衰」「徘徊老人」などとかくネガティブ方向に連想されがちですが、中国語の“老”にはもちろん本来の「年老いている」形容詞の意味もありますが、それ以外に“老师”“老虎”“老鼠”の語構成にも現れるといった性格もあるなど、日本語よりニュートラルな捉え方をされていると言えるでしょう。また年長者を敬う伝統も根強いですから、“圣诞老人”はロマンチックではないとかいった印象は生じないわけです。
外来語をカタカナで表記して取り込んでいる日本語と、外来語を音訳意訳様々なテクニックを駆使して漢字で取り込んでいる中国語とでは、同じ漢字についての見方も、実は大きく異なるものです。

◎中国語サロンは毎週火曜昼休み、信大人文ホールの西側隅っこで開催しています。些細な質問でも中国語の宿題でも、中国語ネイティブの方に尋ねてみたいことがあればお気軽にどうぞ。
 

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