お知らせ・報告

20161206中国語サロン 君の名前。

この日の中国語サロンは市民開放授業受講者の方を含め11人参加となりました。中国語ネイティブの交換留学生WさんとLさんが参加、この日は日本人学生が用事で欠席したことで、日本人4人:中国語ネイティブ7人となった回でした。
 
初参加となる人の自己紹介をきっかけに、日本人・中国人の姓が話題になり、長野県に特に多い姓は何だとか、日本における漢字三文字の姓(五十嵐や二階堂など)についてとか、また漢民族の複姓(複数の漢字からなる姓)に話が及び、“司马”“欧阳”“诸葛”は有名ですが、その他にC先生が知っている例として“上官”“第五”“呼延”を教えてくれました。“第五”が特に面白いというのが参加者の感想でした。“第~”タイプの姓は一から八まで存在しているようです。

 
交換留学生Wさん・Lさんどちらも北京出身ということで、市民受講参加のMさんが「北京に回転寿司はありますか?」と質問し、それに対する二人の答は「たくさんある、北京なら世界中の料理を食べることができる」でした。北京の回転寿司は“元气寿司”が多いということですが、松本市に元気寿司はありません(後日検索したところ元気寿司チェーン店で「魚べい」が1軒だけありましたが、地元の人間は元気寿司と結びつけて認識していないようです)。ですからMさんが「長野ではスシローかカッパ寿司の方が有名で、元気寿司は有名ではない」と説明したら、Wさん・Lさん二人ともとても意外だという表情をしていました。会社やブランドや芸能人等々、中国に進出して中国国内で有名になるものと、中国進出することなく日本国内で有名であるものには、実は大きなギャップがありますので、そこから日本人・中国人双方のブランドイメージの差異を生むことが多々あるものです。
 

この12月から映画「君の名は。」の中国上映が始まり大ヒットを飛ばしていることがニュースとして広く報じられていますが、それがサロンの話題にもなり、交換留学生Wさん・Lさんに見たことありますかと質問したところ、興味はあるけどもう上映は終わってしまったでしょう?という回答。いやまだ終わってませんよ評判がいい映画だからでまだまだ上映していますよと答えると、なら見に行きたい!ということでした。中国では映画の上映期間が短く、2週間ぐらいというのがWさんの答でした。中国のネット情報だと7~10日という見方もあり、人により感じている数字は様々ですが、中国人にとって映画の上映期間は1~2週間というのが常識的な線になります。人気が高く観客が多い映画作品の上映期間が引き延ばされることは日本同様ありますが、それでも1カ月半も上映すれば記録的な長さになるようです。
「君の名は。」は8月末に日本上映開始され、現在12月ですから3カ月以上経過しているわけで、中国人の常識からすれば「もうとっくに上映は終了している」と見做されていても当然なわけです。
 
「君の名は。」は中国上映にあたって≪你的名字。≫と、そのまんまとしか言いようのないタイトルが付けられましたが、この映画タイトルは実に面白みがない、四字成語っぽいのでもっと良いタイトルが作れそうなのにとWさんに私が言ったところ、確かにこのタイトルは味わいがないと彼女も同意してくれました。またWさんが日本語で映画タイトルを口にした時、「君の名前(なまえ)は。」と二度ほど間違えて言い、それを「君の名(な)は。」だと説明し訂正しました。これは無理もないことで、外国人が日本語を勉強する上で「名前(なまえ)」という基本単語は習いますが、「名(な)」は独立性が低く且つ少々古めかしい言い回しですから積極的に学習されず、合せて昭和27年に放送されたラジオドラマに始まる「君の名は」を元ネタにしているといった日本の芸能文化について知識がないとぱっと理解するのは難しいわけです。
 
タイトル翻訳≪你的名字。≫ですが、中国語“名ming”は日本語「名(な)」よりも更に独立性が乏しいため≪你的名。≫では表現が全然安定しない。また「は。」の部分ですが、中国語は日本語の助詞「は」「が」「を」等々をいちいち反映する標示マーカーがありませんから、全く翻訳のしようがないわけです。一方日本語ですと「君の名は。」「君の名が。」「君の名を。」「君の名に。」のようにいろいろ助詞をつけてやれば、後に続くはずの動詞がなくてもおおよそ意味を推察することができる、また時に敢えて省略することでイメージを膨らませ余韻を持たせることができるというレトリック技法が存在します。 「君の名は。」はこのような日本語の性格・日本芸能文化史の常識に裏打ちされた上で映画タイトルとして成立し得ていますが、それを全く異なる言語に当て嵌めようとするとどうしても無理が生じますし、原題の味わいは望むべくもないということになります。≪你的名字。≫を再翻訳すると「君の名前。」が適切でしょうか。
翻訳というものは、その対象が短くシンプルであればあるほど、困難を極めるものです。
 
◎中国語サロンは毎週火曜昼休み、信大人文ホールの西側隅っこで開催しています。些細な質問でも中国語の宿題でも、中国語ネイティブの方に尋ねてみたいことがあればお気軽にどうぞ。

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