お知らせ・報告

20161108中国語サロン NHK特集の見方

≪军地两用汽车交通图册≫、中身は普通の地図です。

この日の中国語サロンは市民開放授業受講者の方を含め10人参加となりました。   画像は中国の地理関係を確認するのに便利かなと思って持ってきた、20年ぐらい前に何故か入手していた≪军地两用汽车交通图册≫、解放军出版社のものです。古いものなので新しい駅名や道路の情報を得るのには役に立ちませんが、都市と都市の位置関係の把握には便利で、「上海に行くにはどこ経由で行くのが便利?」といったように本日のサロンで予想外に活用されていました。

  市民開放授業の受講者であるMさんが、最近の中国で気になることとして“农民工”=「農村からの出稼ぎ労働者」があると口にしたことで、話題になりました。この10月末に放送されたNHK特集(リンク参照)をご覧になったのがきっかけとのことですが、その内容は中国政府による都市開発と経済発展の計画により、大都市(河南省邓州市)において“农民工”たちが以前から住んでいた古い居住地区が取り壊され、彼らが新しい居場所を探さなければならない、それに纏わる様々な問題を報じたものです。 Mさんはこの内容について「“农民工”が可哀想だ」と仰り、おそらくその番組を見た日本人の多くが中国政府のやり方について同じような感想を抱くと思うのですが、ネイティブの研究生Jさんは「可哀想というのとはちょっと違う」という見方を提示しました。

  出稼ぎ労働者である“农民工”の多くは子供を実家に置いて都市へ働きに出てくるのであって、本当は故郷に帰って子供と一緒に暮らしたい、今はそういう“农民工”のためにも“回乡创业”=「故郷に帰って仕事を創めよう」というスローガンの元に補助金制度も始められているとのこと。であるからして、“农民工”が行き場が無くて可哀想というのはやや一辺倒に過ぎる感がネイティブにはあるようです。   確かに昨今の中国の小説などでは、故郷に子供を置いて両親は都会で働く家庭が題材になっているものが多く、一方件のNHK特集では2つの家族を長期取材していましたが、どちらも子供と都会で同居している形でありました(ちなみにどちらの職種も飲食業であり、仕事面でも似た形態です)。どのような背景によってこの2家族が取材対象としてチョイスされたかは私には分かりません。特定の家族を取り上げ、長期取材により視聴者に感情移入させ実感を伴いつつ番組を見せる効果は覿面なのでしょうが、子供と別居している家庭について取り上げてないことを考えると、取材対象に偏りがあるのではと指摘をされても仕方ないかもしれません。一方は子供と同居している家庭、もう一方は子供を田舎に残して都会に働きに出ている家庭と、対照的な2家庭を取材対象に選ぶこともできたはずですし、寧ろその方が様々な家庭の形があることを考慮して問題を掘り下げることができたでしょう。

  もちろんネイティブの語ることだけが全て正しいわけではありませんが、日本のメディアが取材報道する内容も時にバイアスがかかったり、時にきちんと伝わらなかったりすることがあるものです。外国の情報を得るには日本のメディアが有用な面もありますがそれだけでなく、現地の言葉をできるだけ理解し、それを通じて多角的に把握するのがやはり必要なことであろうと感じた一時でありました。     ◎中国語サロンは毎週火曜昼休み、信大人文ホールの西側隅っこで開催しています。些細な質問でも中国語の宿題でも、中国語ネイティブの方に尋ねてみたいことがあればお気軽にどうぞ。  

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