<研究室の紹介>
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野生資源植物学研究室は、演習林および農場との関わりが強く、大学の有するフィールドを
縦横無尽に活用して教育研究に取り組んでいます。ただし、地元信州に限定しているわけでは なく、中部地方はもちろん北海道や西南暖地なども活動拠点としています。
これまで「保全」というキーワードで教育研究を進めてきましたが、信大農学部では他研究室
でもこの言葉が多用されていて、違いがよく分からないという悩みがありました。こうした事情 から、「よそとは違う、うちの研究室でしかできない」という特色を明確にし、2012年度から
『 野生資源植物学 』
という本来の専門分野を打ち出すことにしました。
「保全」は、人間による利用を含めた自然保護の概念です(狭義の「保護」には人間の利用
は含まれません)。では、当研究室で「植物の保全」について具体的に何を扱っているのかとい うと、最近では、
・食用野生資源植物の分布・生態・利用
食用:ヤマブドウ、サルナシなど
薬用:マタタビ
食物繊維:オヤマボクチ(ソバのつなぎ)・・など。
・植生回復(緑化)への自生植物の利用
伊豆諸島御蔵島の台風崩壊地の植生回復モニタリング
スゲ類による切土のり面緑化
・調査の基礎となる植物分類の研究
植物さく葉標本の作成・保存・公開
在来種と帰化種の比較(タンポポ属など)
類似種の形態比較(イタドリ属など)
といったぐあいで、「利用する、役立てる」という目的が必ずあります。
つまり、貴重種だから守るとか、ただ植生調査をして解析するだけというスタンスの研究室で
はない、ということを重々ご理解下さい。
もちろん「野生生物」という名を冠しているので、当研究室では、植物だけでなく、鳥類生態、
ビオトープの生物、獣害調査など、さまざまな生物を扱っています。生き物系の研究室の1つで あることは間違いありません。
ただし、
1.どんな対象生物であっても、必ず根幹に植物を位置づける。
・・・鳥類生態でも、植物分類や植生調査についての興味・素養が求められます。
2.農学=「問題解決学」であり、目的意識を必ず持つ。
・・・趣味嗜好やお遊び的な研究はしません。
3.1つの専門性を深めることに加え、多分野間を連携・総合して考える能力を磨く。
・・・ピンポイントの知識・技術を持った人は世の中にはいくらでもいます。
最高学府である大学では、様々な分野をそれぞれ学び、それらを総合して物事を考え
ることができるという面白さと威力を習得してください。
というのが、うちのルールです。
たとえば、うちで行なっているカラスの調査では、行動や個体数だけでなく、ねぐらとなる場所
の立地環境(植生・地形等)の解明をむしろ重視しています。鳥類相の調査でも、その前段階 として調査地の植生を踏まえないと、得られた結果が何を意味するのか解釈できません。
また、うち独自の研究テーマもありますが、「異分野の他研究室との連携」のもとに研究を
進めているというのも当研究室の大きな特色です(上記の3.に関連)。じつは、大学では分野 が細分化されすぎ、身内だけで活動している研究室のほうが普通なのです。
世の中で起きている問題は複雑で、たった1つの分野で解決できるような簡単なものではあ
りません。大学で学ぶ皆さんは、将来、会社や役所でなにかの問題・仕事に取り組むときに、 責任あるリーダー的存在になることを期待されます。そこでは、専門家としての知見・経験と、 全体を見渡す総合力が問われます。
よって、うちでは個人個人の専門性を深める指導をもちろん行ないますが、異分野について
も広く浅くでいいので目を向け、参考にできる知識や方法を取り込むような教育を信条としま す。研究室間の連携もその一環です。
<住所と連絡先>
〒399-4598 長野県上伊那郡南箕輪村8304 信州大学農学部
B棟3F
Tel : 0265-77-1300(代)内線2385
0265-77-1645(直通、FAX兼)
E-mail: tearase*shinshu-u.ac.jp
( 「*」 を 「@」 に換えてお使い下さい)
<メンバー構成>
教員
准教授 荒瀬 輝夫
学生・院生(平成28年度)
4年生 西尾 有香音
増田 遥
担当教員の関連する学科・コースから配属します。通常、 演習林系の研究室 ← 森林科学科 (改組後)森林・環境共生学コース 農場系の研究室 ← 食料生産科学科 (改組後)植物資源科学コース・動物資源生命科学コース から学生が配属します(例外もあります)。詳細はお問合せ下さい。
<所蔵資料、研究道具>
・植物さく葉標本 約1500種3500点(継続して拡充中)。
・実験用の種子
・植物・動物の図鑑多数、統計関係の書籍多数
・動植物環境調査用具(タモ網、シャーマントラップ、フィールドスコープ・・・などなど)
・保存用冷凍庫、通風乾燥機、インキュベーター (小さいですが)
・実体顕微鏡、画像取り込み機器&解析ソフト
・樹高・距離測定機器類
・分光色差計、光沢計、糖度計、pH・ECメーター等
・水域調査用ゴムボート(農村計画学研究室・造林学研究室と共同利用)
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