樹脂包埋

実験前日に行うこと
乾熱滅菌(RNaseの失活)
・300mlビーカー、スターラー、バイアル瓶(フタはポリプロピレンなので、RNase Zapで処理)、mold

試薬作製
・DEPC処理水(RNaseを失活させた水)
 (1)蒸留水999mlに対して、DEPC(発がん性物質)を1ml加える。
 (2)37℃で1時間以上反応させる。
 (3)オートクレーブで121℃、30minの処理を行う。
  ※15minで十分らしいが、DEPCを完全に不活性化させるために時間長めで。

固定試薬(サンプルの状態を固定化させる)
・Farmer's fixative(エタノール:酢酸=3:1)
 いずれも分子生物学用を使う。乾熱滅菌済みのバイアルビンに5ml入れて、4℃で保存。

脱水試薬(細胞内の水分をEtOHに置換する)
・エタノールシリーズ EtOH series
 75%etOH・・・・・・EtOH:32.5ml, RNase-free water:12.5ml
 85%etOH・・・・・・   37.5ml,         7.5 ml
 95%etOH・・・・・・   42.5ml,         2.5 ml
 100%etOH ×2・・・モレキュラーシーブスで脱水したEtOH:50ml
 
 4℃で保存

包埋剤(サンプルを包埋する)
・Steedman's wax(ポリエチレングリコール:1-ヘクサデカノール=9:1)
 70℃で融解させ、スターラーで撹拌して作製
 作製後は、38℃で保存
  Poly(ethylene glycol)400 distrearate 500g (01048, Polysciences)
  
 
包埋は大まかに3つの過程から成り立っている。

化学固定
1.DEPC処理水を入れたシャーレ(乾熱滅菌済)を2つあらかじめ氷上で冷やしておく。一つめは深さ3mmほど、二つめは水たまり程度。
2.カミソリをZap紙で拭いて、RNase-freeにする
3.サンプルを解体して、根の砂を落とし、地上部と根とに切り分ける
4.ピンセットで根を持ち、1つ目のシャーレで洗う
5.2つめのシャーレで、カミソリ(RNase-free処理済)を使って根を2-4mm間隔でカットする
6.RNase-free紙(Zapなど)で根の水分を吸い取る
7.根を固定液(Farmer's fixative)に浸し、混和させる
8.4℃・14h振とう

脱水
1.固定液を除く
2.75%,85%,95%,100%,100%EtOH、それぞれ15min・4℃で脱水
3.EtOHを半分除き、38℃・10minインキュベート
4.除いたEtOHの分だけSteedman's waxを加える
5.EtOH:wax=1:1の状態で38℃・2h振とう

置換・包埋
1.Steedman's wax、38℃、2h×3で振とうしながらインキュベート
 ※waxの入れ替えは、wax凝固防止のために、スライドウォーマー(38℃)上で作業する。
2.ここからは、スライドウォーマー上で作業する(38℃設定)
3.金属moldにバイアルビンの中身を出す
4.根は中央によせて、密集させるように並べる
5.ミクロトーム固定用のカセットをセットする
6.waxを流し込む。
7.スライドウォーマー上から避けて、室温で冷やして凝固させる
※凝固させる時は、サンプルの部分と他の部分が一緒じゃなければならない。
  ミクロトームの際に、サンプルの部分だけが分離してしまうことがある。
8.4℃保存なら14日以内、-80℃保存なら1か月以内であれば、RNAの存在が確認されてる。



前日に行うこと
・RNA Secure Zapを吹きかけて、通気性を確保、埃が落ちないように一晩静置。
・RNAsecure水の作製
 (1)蒸留水9.6mlに対して、conc RNAsecureを0.4ml加える。
 (2)60℃・1h反応させてRNaseを不活性化する。
 (3)4℃で保存。
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LCMは2つの過程から成り立っている。

薄切切片作製

必要な物
メンブレンスライド、254nm紫外線照射装置、RNase-Zap、RNAsecure水、ミクロトーム、ミクロトームの刃(S22)、
加湿器、乾燥剤、キムワイプ

・刃を装着し、ブロックをセットする。その際、ブロックと刃が水平になるように調節する。手順は
 正面、奥行きで水平にした後、再度正面で水平にする。
・包埋したブロックを金枠から取り出す時、カミソリで上部周囲のwaxを削ぎ取る。その後、
 カミソリを下部に刺し入れて隙間を作り、その隙間に中古のミクロトームの刃を刺し込みブロックを取り出す。

@乾熱滅菌処理したメンブレンスライドを254nmの紫外線に1時間ほど当てて、メンブレンを疎水化する。
ARNase-free紙を敷き、その上にメンブレンスライドを乗せ、メンブレンスライドの膜にRNAsecure水を滴下する。
Bミクロトームで厚さ15μmの切片を切り出す。ろ紙で薄切切片の切り出された部分を乗せながら切り出す。
Cスライド上の水に切片を乗せ、RNase-free紙で水を吸い取る。
DRNase-free紙で切片に軽く触れ、さらに水を吸い取る。
E切片を4℃・1h程度の条件下で乾燥させる。

・包埋剤がSteedman's waxの場合、刃はS22(より薄い切片の作製用)が良い。
・切片をスライドに張り付ける前にスライド全体に水を張っておく。表面張力を利用して、こぼれないように張る。
・加湿器にDEPC処理水を100mlほど入れ、蒸気は10〜12ほどの強さで10秒ほどあてるようにする。
  時間が短すぎると、切片はクシャクシャになりやすくなるし、長すぎると非常にもろくなる。
・ブロックをセットする時、根量が少ない方を向こう側にする。
・切り出される薄切切片は厚いのと薄いのが交互にできる。厚いほうがスライドに乗せるのが楽。
・切片にあてるろ紙は長方形、もしくは四等分にしたものの方が良い。
・スライドに切片を張り付ける時、スライド上の水に乗せて、しばらく静置することで切片をきれいに伸ばす。
・切片がきれいに伸びたら、キムワイプで両側から水を吸わせる。
 最後に、Zapをかけたキムワイプをあてて水を吸わせる。

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LCM(Laser Capture Microdissection)

用意する物
薄切切片を乗せたスライド、スライドウォーマー、100%EtOH、滅菌スポイト、廃液受けのペトリ皿、
0.5mlマイクロチューブ、RNAiso plus 2ml(分注したもの)、RNase-Zap、キムワイプ

作業の前に・・・
実験室のエアコンを除湿モードにする。LCM上での細胞単離中に水が発生しなくなり、
スライドの組織が剥離しなくなる。

@スライドウォーマー(38℃設定)でプレパラートを温めて、waxを融解させる
Awaxが透明になったら、100%EtOHをかけ流して脱waxする
Bwaxが目視できなくなったら、RNase-free紙で包埋組織に触れないようにEtOH除去する
Cスライドウォーマー上で1分間ほど温めて、EtOHを蒸発させる
DLMDで細胞を切り出す