田園生態系の保全



水田環境の変化に伴う水田に生育・生息する生物の減少を受け、近年、生物多様性を重視した田園地帯の整備・維持管理活動の重要性が高まってます。これまでの研究成果から、都市化に伴う環境変化や田園整備はカエル類や植物、昆虫の多様性に大きな影響を与えている事が明らかになりました。



画像の説明 長野県伊那盆地の水田地域に生息する絶滅危惧種ダルマガエルの食性と立地環境条件との関係

伊那盆地はダルマガエルRana porosa brevipodaにとって、主要分布地から隔離された特殊な分布地である。しかし近年、本地域では個体数の減少が報告されており、保全の必要性が高まっている。そこで本研究では本種の保全策の検討に必要な食性と環境条件との関係を把握することを目的とした。その結果、水田の畦に生息する餌動物相には地域・季節ともに大きな変化はみられなかったにも関わらず、胃内容物構成には違いがみられた。そこで、現在、異内容物構成と環境条件との関係について検討を行っている。

(木田耕一)
画像の説明 長野県上伊那地方における希少種を含む水田雑草群落の構造と立地環境条件との関係

本研究では希少種が生育する水田圃場が残存する6地域において,水田雑草群落の構造や分布と立地環境条件との関係を明らかにし、その保全策を検討することを目的とした。群落調査は2010年8月〜9月に行った。調査を行った173区画において96種の水田雑草が出現し,その中には絶滅危惧種の植物が14種含まれていた。TWINSPAN解析の結果,出現種は群落は乾生〜湿生群落型と湿生〜湛水群落型という、水分環境の異なる2タイプの群落に大別されることが明らかになった。各群落では異なる希少種が出現することから、多様な群落が成立するためには多様な水分環境の立地の存在が重要であると示唆された。

(新谷大貴)
画像の説明 長野県上伊那地方における水田地域の水生昆虫群集と立地条件との関係

水田は一時的な水生昆虫の生息場所としてだけでなく、多くの種の繁殖場所として重要な機能をもっており、淡水湿地を生息地とする生物種にとって貴重な立地環境となっている。しかし、近年、タガメやゲンゴロウ等の水田を主な生息地とする昆虫が著しく減少し、環境省レッドリストに掲載されるようになったことから、水田地域における水生昆虫群集の保全が注目されつつある。そこで本研究では,異なる立地条件を有する水田地域において水生昆虫群集と立地環境条件との関係を解明し、これらの具体的な保全策を検討した。その結果、水田地域における水生昆虫群集の保全策の一つとして乾田化を防ぐことがあげられた。

(榊原有里子)
画像の説明 長野県上伊那地方のハッチョウトンボ生息地域におけるトンボ群集と立地環境との関係

長野県上伊那地方にはハッチョウトンボという不均翅亜目の中で最小の種が生息し、自然復元のシンボル生物として用いられている。本種の生息する中山間地域には、それぞれ生息環境が異なるトンボ類が生息することも確認されており、トンボ類の多様性保全の場尾として重要であると考えられる。ここでは中山間地域におけるトンボ群集の構造と環境選択、また土地利用との関係性について明らかにし、その保全策について検討することを目的とした。選定した調査地域をルートセンサス法を用いてトンボ群集調査を行い、土地利用調査を行った。8月から10月の間に、26種3969個体のトンボを確認することができた。現在、トンボ群集と環境条件との関係について解析中である。

(荒川諒)
画像の説明 長野県上伊那地方の異なる水田地域における直翅目群集の構造と環境要因との関係

 本研究では立地環境が異なる水田地域において、水田生態系における代表的な昆虫群である直翅目の群集構造と環境要因との関係を解明し、その保全策について検討した。調査は長野県上伊那郡の立地環境・整備状況が異なる5箇所の水田地域に設定した直径500m円内を対象として行い、畦畔上に設置したプロットにおいて目視法およびスウィーピング法・踏み出し法トラップを用いて直翅目昆虫を捕獲した。併せて植生調査、土地利用調査、管理状況の聞き取り調査も行った。調査結果より、直翅目群集の構造が畦畔の植生条件や管理方法、周辺植生等に大きく影響され、それらの不均一さが地域の種多様性に貢献していることが示唆された。

(澄川元晴)
画像の説明 長野県上伊那地域における水田雑草の指標性を用いた環境評価法の検証

水田環境は多くの生物が生息,生育しているが、圃場整備による乾田化や農薬などが普及したことで水田環境は大きく変化し、種の減少や絶滅が危惧されている。そこで本研究では,こうした水田環境の変化が生物に与える影響を把握するため、水田環境のモニタリングに適した種の抽出を行い、水田雑草を環境指標生物として利用できるかを検証した。その結果,中山間地よりも市街地で多くの種数が見られたが、その一方,絶滅危惧種は中山間地において多く出現する傾向が見られた。今後、各種の分布と環境条件とを関連づけることによって、水田雑草の環境指標性を考察していく.

(松下遼太)
画像の説明 チョウ類群集及び植物との関係からみた立地環境の異なる水田地域の生息地としての評価の10年間の変化

近年,水田地域において土地利用や農業形態の変化によって,そこを生息地とする生物に影響を与えている。チョウ類は,幼虫期も成虫期も餌資源の多くを植物に依存しており,水田地域の緑化材による特定種の増加,また食草がなくなることでの消失などの影響を受けることがしられる。  本研究では同調査地における2011年度と2001年度チョウ類群集・環境条件を比較し,環境指標性の高いチョウ類群集の10年間の変化を明らかにする。

(不破崇公)
画像の説明 長野県上伊那地方の立地環境が異なる水田地域におけるカエル類群集の構造と季節消長

近年、世界的な両生類の減少が警告されており、その保全が緊急の課題となっている。日本においては、在来のカエル類のほとんどは水田地域を主な生息環境としており、水田地域はカエル類の保全上、最も重要な地域の1つである。そこで本研究では、長野県上伊那地方の立地環境の異なる水田地域においてカエル類群集の構造・季節消長と環境条件(土地利用、、畦畔環境、管理形態など)の関係を明らかにし、水田地域におけるカエル類の保全手法を提案することを目指す。

(大部由佳)




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