イネの発芽を助ける薬 過酸化石灰



イネの種を田んぼの泥の中にまくと、うまく発芽しません。正確に言うと、全く発芽しないわけではないのですが、発芽しても苗が充分育たないうちに枯れてしまうものが多いのです。

田んぼの泥の中でも種がうまく発芽して苗が良く生長するようにする薬、それが「過酸化石灰」という薬です。
過酸化石灰を種に塗り固めて作った種(コーティング種子とか被覆種子といいます)だと、田んぼの泥の中にいてもうまく発芽し、苗が良く生長します。


薬の安全性は?この薬はなぜ効くの?コーティング種子って?

薬の安全性は?

過酸化石灰という薬は「農薬」という扱いになっていますが、実質的には「肥料」と考えても良いでしょう。殺虫剤、殺菌剤、除草剤のような残留性や毒性はまず考えられません。

過酸化石灰は以下のような反応で水と反応して、酸素を出します。
この反応で水酸化カルシウムというものができますが、土の中ではすぐに炭酸カルシウムなどに変化します。
炭酸カルシウムはカルシウムを補うための肥料として使われているものです。

  2CaO2+2H2O→2Ca(OH)2+O2

  (過酸化石灰+水→水酸化カルシウム+酸素)


この薬はなぜ効くの?

薬が出す酸素が発芽を助けます。
薬から出た酸素をイネの種が吸って発芽や苗の生長が良くなるものと考えられてきましたが、酸素は種の周りの土の環境を発芽にとって適した環境に保つ効果が大きいことが最近分かってきました。詳しくは、この後のページで説明しています。

コーティング種子って?

京都のお菓子で有名な五色豆を思い浮かべてください。豆の周りの砂糖の代わりに土や農薬などをくっつけたのがコーティング種子です。

非常に小さくて扱いにくい種に土をくっつけて大きくして扱いやすくしたり、吸水性の高い資材を種にくっつけて乾燥地でも種が発芽しやすいようにしたり、農薬、肥料などを種にくっつけるなど、種にいろいろな資材をくっつけて作った種をコーティング種子と呼んでいます。

過酸化石灰という薬だけでは種からはがれやすいので、「接着剤」の役目をはたす石膏を混ぜたものを種にくっつけます。

       

コーティング種子を作っている様子   過酸化石灰をつけたコーティング種子

回転する大きな皿に種を入れて、水を吹きかけながら薬を少しづつ種にくっつけていくと、コンペイトウのようなコーティング種子ができあがります。
実はコンペイトウはこれと基本的に同じ方法で作っています。