生物資源化学講座 食品生化学研究室
教授  藤井 博


教育研究内容の紹介

 今年1月に着任し、実質的には4月から新しくスタートしたばかりの研究室です。生命現象を分子レベルで解明し、その研究成果を応用研究に発展させることによって、人の健康維持に貢献したいと思います。
 近年、ヒトゲノムの解析から、病気の原因遺伝子が次々と同定されていますが、疾患の多くは遺伝子だけではなく、環境因子によって引き起こされると考えられています。特に、癌、糖尿病、動脈硬化といった生活習慣病や神経変性疾患などは、環境因子(食品、酸化ストレスなど)が引き金になっていると考えられていますが、その分子基盤はまだ確立していません。これらの疾患は、今後高齢化社会を迎えるにあたって、日本でも益々増加することが予想され、創薬のターゲットとして注目されると考えられます。
 本研究室では、生体機能の調節機構の生化学的解析および環境中(食品など)にある優れた機能分子の探索と機能解析に関する研究を行い、生体が環境に応答して恒常性を維持するシグナルネットワークの解明を目指しています。


(1)核内受容体を介するシグナル伝達機構の解析とその応用
 脂溶性リガンド依存性の転写因子である核内受容体は、標的遺伝子の発現を介して、個体発生における形態形成、細胞の増殖・分化、代謝調節、炎症・免疫の制御など、生体の恒常性維持において極めて重要な機能を果たしています。
 本研究室では、核内受容体シグナルの分子機構の解析とその破綻に起因する種々の疾患の解析とその予防および分子創薬の開発を目指しています。特に、まだリガンド不明のオーファン核内受容体があることから、食品中の脂溶性機能分子の中には、核内受容体の内因性リガンドとして機能しているものもある可能性があります。

 

核内受容体を介する細胞内シグナ伝達機構

(2)新規食シグナルの探索と生理機能の解析

 近年、食品中には生体機能を調節する機能性分子が数多くあることがわかってきましたが、脂肪酸およびコレステロールの誘導体や代謝産物の中には、核内受容体のリガンドとしての作用や神経機能の調節など、極めて重要な機能を果たしていることがわかっています。特に、食品中にある機能性分子による遺伝子発現制御機構や細胞内シグナル伝達機構の解析とその応用に興味を持っています。


(3)幹細胞の恒常性維持機構の解析とその応用

 長期にわたって未分化状態を維持し、種々の組織の再生や修復において極めて重要な役割を果たしている組織幹細胞のトランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム解析によって、幹細胞の恒常性維持機構の分子基盤の解明を目指しています。