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平成29年度「自然の成り立ちと山の生業演習」を実施しました。

お知らせ演習林系の実習

人気の薪割り
人気の薪割り
チェンソーの取扱説明
チェンソーの取扱説明
チェンソーを使った丸太切り
チェンソーを使った丸太切り
ヒノキの枝打ち(高枝鋸を使っています)
ヒノキの枝打ち(高枝鋸を使っています)
森林認証の講義(三木先生)
森林認証の講義(三木先生)

<公開森林実習>

自然の成り立ちと山の生業演習

<実習目的>

 本格的なフィールド演習の未経験な非農学部生にも、中部山岳域における「自然の成り立ち」から森林作業と木材加工による「山の生業」までを安全に体験出来る初心者向けのダイジェスト演習として開講する。

1.中部山岳域における、初歩的な植物種の同定から、フィールドワークの実践、記録から取りまとめまでを一貫して身に付ける。

2.健全な森林を造成するために必要とされる造林および育林に関する基礎知識を習得する。

3.造林および育林作業における基礎的な作業内容、手順を理解し、実行することが出来る。

4.作業上の危険の認識や適切な安全確保が出来る。

5.木材の性質を理解し、適切な工具を用いて素材を加工、製品化することが出来る。

<実施日程>

 平成29年9月5日(火)~9月8日(金) 3泊4日

<実施場所>

 信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC) 西駒ステーション・構内ステーション・手良沢山ステーション

<担当教員>

 小林元(准教授)荒瀬輝夫(准教授)白澤紘明(助手)三木敦朗(助教)木下渉(技術職員)野溝幸雄(技術職員)酒井敏信(研究支援員)中島夕里(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター森林圏ステーション技術職員)ティーチングアシスタント4名(信州大学大学院生、学部4年生)

<参加人数>

 16名(信州大学農学部11名、工学部3名、静岡大学1名、長野大学1名)

<スケジュール>

1日目 9月5日(火)

13:00~13:30 ゆりの木資料館にて受付(ゆりの木研修室)

13:30~14:00 実習ガイダンス(実習概要、班分け、部屋分け、炊事・洗濯の説明等)

14:00~15:00 信州大学演習林紹介、高山帯の動植物に関する講義、亜高山帯常緑針

葉樹林に関する講義

15:00~16:00 地域研究

16:00~17:30 入浴

17:30~18:00 桂小場学生宿舎移動

18:30~19:30 自炊

19:30~21:30 夕食、懇親会

22:00      就寝

2日目 9月6日(水)

06:00~07:00 起床、自炊

07:00~08:00 朝食

09:00~12:00 亜高山帯の森林観察(ヒノキ小屋~水無し坂~望学台)

12:00~13:00 望学台にて昼食

13:00~13:30 望学台~しらべ小屋

13:30~14:00 休憩(しらべ小屋)

14:00~16:00 信大ルート~大樽小屋~桂小場登山道経由、桂小場学生宿舎

16:00~17:30 入浴

17:30~18:00 桂小場学生宿舎移動

18:00~19:00 自炊

19:00~20:00 夕食

20:00~21:00 北海道大学演習林の紹介

22:00       就寝

3日目 9月7日(木)

06:00~07:00 起床、自炊

07:00~08:00 朝食

08:00~09:00 学生宿舎清掃

09:00~09:30 構内演習林移動

10:00~12:00 林業実習体験(丸太切り、木材チップ作成)

12:00~13:00 昼食

13:00~14:00 林業実習体験(丸太切り、木材チップ作成)

14:00~15:00 手良沢山学生宿舎移動

15:30~16:30 人工林の育成に関する講義、手良演の移管経緯、SGEC認証取得

17:00~18:30 自炊

18:30~20:30 夕食(木材工学演習受講生と交流会)

21:00      就寝

4日目 9月8日(金)

06:00~07:00 起床

07:00~08:00 朝食

08:00~09:00 学生宿舎清掃

09:00~11:00 人工林の観察

11:00~12:00 林業実習体験(枝打ち)

12:00~13:00 昼食

13:00~14:00 ゆりの木資料館に移動

14:00~15:00 レポート・アンケート作成、修了式(ゆりの木研修室)

 ※西駒ステーション桂小場宿舎の給湯設備故障のため、1日目・2日目の入浴は、近隣入浴施設を利用。

<概要>

 前年度は野辺山ステーションと筑波大学農林技術センター川上演習林で開講した自然の成り立ち編を、本年度は西駒ステーションで開講した。フィールドの変更に伴い、自然の成り立ち編プログラムを里山二次林の動植物観察から、亜高山帯常緑針葉樹林の観察に替えた。山の生業編では座学の割合を増やし、手良沢山演習林の移管の経緯やSGEC森林認証取得についての講義を行った。

 初日はガイダンスと簡単な自己紹介を行った後、演習林各ステーションの紹介、高山帯の動植物に関する講義、亜高山帯常緑針葉樹林に関する講義を行った。また、1/25,000の地形図を用いて、翌日登る西駒ステーションの地域研究を行った。講義終了後、大芝の湯で入浴し、桂小場学生宿舎に向かった。夕食時の懇親会では受講生同士の親睦を深めた。

 2日目の自然の成り立ち編では小黒川増水のため、当初の計画とは逆コースの桂小場登山ルートを登り、信大ルートを下山する経路を辿った。小雨とガスで視界の悪い中ではあったが、皆で元気に亜高山帯常緑針葉樹林の観察を行った。標高だけでなく、人間による土地利用前歴の違いによっても林相が変わることを亜高山帯常緑針葉樹の二次林を見ながら学んだ。夕食後のアカデミックワールドでは、北海道大学技術職員に北海道大学の雨竜研究林を紹介していただいた。雨竜研究林の美しいスライドを通して、亜高山帯林では体験することの出来ない、亜寒帯林特有の広大な森林スケールをイメージすることが出来た。

 3日目からの山の生業編では構内ステーションに移動し、チェンソーを使った丸太切りと木材粉砕機を用いた木材チップの作成、および斧による薪割りを行った。慣れないチェンソーの操作に緊張する受講生が多かった。木材の割れ方や強度を体感することの出来る薪割りは、工学部の学生らに好評であった。午後からの座学では人工林の育成を学び、手良沢山演林の移管に関する歴史的経緯と、その後のSGEC森林認証取得に至る持続的な森林管理経営について学んだ。講義終了後、手良沢山ステーションに移動した。手良沢山ステーションの学生宿舎では同時日程で開講していた木材工学演習の受講生と相宿して、親睦を深めた。自らの手で割った薪で起こしたキャンプファイアーは、受講生それぞれに様々な感慨を与えたようであった。

最終日の4日目は、手良沢山ステーションで人工林の見学と枝打ちの体験を行った。森林科学科の学生が実習を通して植林した新植地や除間伐林を見学した後、手鋸と高枝鋸を用いてヒノキの枝打ちを行った。森林作業だけでなく、人工林の急な登りにも戸惑う学生が多かった。昼食後は構内ステーションに戻り、ゆりの木資料館にてレポートの作成と修了式を行った。

<感想および今後の展望と課題>

 今年で第2回目を迎える本演習は、自然の成り立ち編を野辺山ステーションから西駒ステーションに変更して行った。西駒ステーションでは受講生の安全と体力を考慮して、標高2,100m付近の亜高山帯常緑針葉樹林帯までを自然観察コースとした。時間と体力にゆとりを持たせたおかげで、標高や土地利用の前歴による植生の違いを詳細に認識することが出来たようであった。登山の装備に関しては専門的な用具を求めなかったが、明らかに準備不足の受講生もおり、安全な登山を実践する上での装備の徹底を図る必要を感じた。

 山の生業編では、チェンソー等の慣れない山道具や人工林の急な斜面に戸惑う受講生も多かった。一方で、実技と見学を講義と組み合わせて行ったことにより、理論を実践することの難しさ、理想と現実がどのような要因によって乖離して行くか身を持って理解してくれたようであった。当初は、自然の成り立ち編と山の生業編を林相や立地条件の全く異なる亜高山帯常緑針葉樹林とヒノキ人工林で行うことに不安があったが、「人間による土地利用形式の変遷」を両編に一貫したテーマとして設定したことで、当初に目論んだ「人間の自然への働きかけ方の違い」によって山の姿がどのように変わって行くのか、良く理解してもらったように感じた。今回は天候が不順であったため、西駒ステーションでほとんど動物を観察できなかったことを残念に思う受講生が多かった。来年度は、動物観察の機会が増えるようプログラムを工夫したい。

<アンケート>

H29「自然の成り立ちと山の生業演習」受講者アンケート(PDF:317KB)

桂小場登山道大樽小屋.png

       桂小場登山道大樽小屋

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