キックオフシンポジウム

講演1 第二の炭素革新、ナノカーボンで造水イノベーションを目指します 誰も実現していない炭素技術の開発を

 私たちが目指すのは、海水の淡水化や資源を採掘する際などに使っている有機膜を改善・発展させて新しい膜をつくること。そして、イノベーションに必要な素材をつくることです。
 現在、日本は鉱物性燃料輸入額が30兆円近くになります。水と化石燃料を分離できる技術を開発すれば、持続可能な技術として世界に貢献できるとともに、日本に安定供給支援が提供されることになるのです。
 私たちの他にも世界中の大学や研究機関がカーボンを使った水の純化や資源分離の技術を研究しています。しかし、カーボンを使ったナノ空間のサイエンスやケミストリーはまだ誰も実現できていません。この拠点で研究を進め、実現したいと思っています。そしてカーボンファイバーに続く第二の炭素革新を起こしたいのです。
 そのために10年後の社会が何を求めているのかを研究に反映し、世界に貢献する技術を開発できるように頑張っていきます。

国立大学法人信州大学 カーボン科学研究所特別特任教授 遠藤守信(研究リーダー)

講演2 世界の水問題と膜利用水処理技術~現状と今後の展開~ 水の技術を将来の食糧や資源の確保に

 下水排水処理、再利用などの将来考えられる水に関する課題を解決するため、逆浸透膜(RO膜)やナノろ過膜について研究を進めます。
 RO膜は、高透水でイオンなどの溶質を除去する性質があり、海水の淡水化や下水と排水の再利用に使われています。また、孔径の制御と薄膜の形成には、カーボンの技術を用いるのが有効だと考えられています。今後は、表面が平滑で微生物がほとんどつかない新しいRO膜を使うなどして、下水排水の再利用の技術を向上させていきます。
 ただしRO膜には、耐久性や汚れに対する課題があり、資源採掘の随伴水などの処理についてもまだ不十分です。こうした問題は分離膜だけでは解決できません。信州大学のナノカーボン技術を基盤にCOI拠点の力を結集し、革新的な物質分離材料や生産技術、システムを開発することで解決していきたい。そして、水の技術を将来の食糧や資源の確保につなげることを目指します。

東レ株式会社 水処理事業部門・研究本部理事 辺見昌弘(サブプロジェクトリーダー)

講演3 「水」大循環をベースとした持続的な「水・人間環境」 拠点を補完するために新たな視点を提案

 私たちは、信州大学が中核拠点となるCOIを補完するために、COIサテライトとして「水」大循環を例とした持続的な水と人間環境を構築する研究開発を進めています。さまざまな観測データをベースとし、これまでの調査と解析に「自然の成り立ちと文化」という視点を加え、水と人間環境がどうあるべきかを計画設計します。
 さらに、計画設計とシミュレーション、科学的根拠を基に最適条件を明らかにし、水と人間に適した、あるいは地域に根ざした環境を提案します。こうした研究を進めることで、社会に向けた新しい視点を提供できると考えています。
 そして私たちの拠点と中核拠点が協力して研究することで、新たな視点で日本の水システムを生み、その知見を世界でも生かしたい。第一歩として、大気、海洋、地下水系の大循環モデルを作成し、環境や文化、生物多様性といった生命と水とが関連するマップをつくりたいのです。そのマップから新しいパターンや基軸、指標を提示することを目指しています。

独立行政法人海洋研究開発機構 地球シミュレータセンター プログラムディレクター 高橋桂子(COI-S 拠点研究リーダー)

提案機関

  • 信州大学
  • HITACHI
  • TORAY
  • SHOWA DENKO
  • 独立行政法人 物質・材料研究機構
  • 長野県